平成29年度においては、人間の筋電位データに基づく手先力参照値と各筋力出力との変換手法を、前年度において確立した生体システムの筋骨格モデルを規範とした運動制御技術へと適応し、運動制御技術の拡張を行った。これにより、単関節筋・二関節筋の相互作用を考慮した人間の筋骨格モデルを規範とした手先の位置・力制御技術が構築された。また、前年度に試作した上肢基礎システムである二関節筋を有する2リンクマニピュレータに、構築した運動制御技術を実装することで、運動制御技術の有効性を実証した。従来の人間の筋電位データのみに基づく運動制御理論と比べ高精度な運動が可能であり、身体性に基づく高度な運動技術が構築されたと考えられる。 さらに、二関節筋を有する2リンクマニピュレータに基づく上肢アシストシステムの設計試作を行った。前年度に試作した上肢基礎システムと同様に、3個のモータと遊星歯車機構を用いることで3入力2出力を実現している。これにより、上肢の筋骨格モデルと同様に2つの単関節筋と1つの二関節筋の具現化を可能としている。また、各々のリンク長においては人間上肢データベースをもとに設計を行い、装着型の上肢アシストシテムとして設計試作を行った。通常の上肢アシストシステムと異なり、人間の筋骨格モデルを規範とした構造となっており、二関節筋を有する上肢アシストシステムとなっている。また、試作した上肢アシストシムを用いて、基礎評価試験を実施した。
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