本研究では、ニホンミツバチの行動観察を通して環境大気の有害性を評価する手法の開発を目指した。大気中には様々な微量有害物質が存在しているが、その有害性を簡便かつ分かりやすく評価する方法は存在しない。そこで、高い学習能力と鋭敏な化学感覚をもつニホンミツバチを利用し、環境大気に曝露させたときの行動(忌避行動など)を観察することによって、組成が複雑で低濃度である環境大気の有害性を簡便かつ理解しやすい方法で評価することを目指した。平成28年度は、実験装置の作製および装置性能を検証するためのミツバチ上昇観察実験を行った。それを踏まえて平成29年度は、有害物質としてアンモニアを用いてミツバチ上昇観察実験を行った。平成30年度は、有害物質としてアセトアルデヒドを用いて同様の実験を行うとともに、一連の評価手法の決定を行った。ミツバチ上昇観察実験では、ミツバチが装置内において上部へと移動する特性があることを利用し、移動経路の途中に設置したろ紙によって有害物質の曝露条件を変化させることで、上昇回避行動が起こるかどうかを観察することとした。まず、比較のために装置内のミツバチ移動経路の途中に設置したろ紙に水道水を滴下し、上昇行動を観察して上昇に要する時間を把握した。続いて、ろ紙にアセトアルデヒド水溶液を滴下し、上昇時に揮発したアセトアルデヒドガスに曝露される状況を作り出して、同様に上昇行動を観察した。その結果、アセトアルデヒド水溶液を滴下した場合に上昇に要する時間が長くなる傾向にあり、飛行阻害が起こる個体も観察された。以上の結果を踏まえて、ミツバチ上昇観察実験によるガス状物質の有害性評価手法を決定した。
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