本研究では,癌細胞の環境を生体外において再現し,癌細胞の浸潤挙動や抗癌剤効果の正確な評価を可能とする,新規3次元細胞培養系の開発を目指した。マイクロ流路技術を用いて,軟部および硬部からなる階層的な微小ハイドロゲル材料(ハイドロゲルファイバーおよびハイドロゲルシート)を作製し,その内部に癌細胞と正常細胞を正確に配置して培養した。ハイドロゲルの硬さを調節し,また栄養分の供給方向を制御することで,癌細胞の浸潤を一定方向に誘導し,浸潤度合の定量評価を可能とする新規システムを開発した。本研究で作製したハイドロゲル材料は,癌の診断や新規抗がん剤の開発において有用なツールとなりうると期待される。
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