研究課題
本研究では、溶融スズ等の液体金属で乱流が十分に発達した流速数m/s の自由表面流を生成し、これが超高熱負荷に耐えられるかを実験的に検証する。その結果を基に、核融合炉における受熱と排気を両立するものとして我々が提案している新概念の液体金属噴流シャワーを用いたダイバータREVOLVER-D が実現可能なことを示す。液体金属噴流の重力による加速を抑制し、細流化及び液滴化を防ぐと同時に、噴流内の乱流を促進して温度を一様化するため、噴流内部にチェーンやテープ、あるいはワイヤ形状の内部流体抵抗を挿入する。本研究の初期段階では、この内部流体抵抗が噴流に与える影響について、実験と数値シミュレーションの両面から明らかにし、最適な形状を見出す。液体金属への超高熱負荷印加実験を行うため、電子ビームやプラズマの照射が可能なように、真空容器内で液体金属噴流を生成する装置を製作する。平成28年度は、ハンダ循環装置を真空容器内で運転するための冷却装置の設計と、スズやハンダ等の液体金属を用いた実験をアルゴン雰囲気中で行うための密閉式大型グローブボックスの設計及び製作、据付を行った。溶融したスズやハンダ等の液体金属は大気中で容易に酸化し、特性が大きく変化してしまう。これを防止するため、アルゴン雰囲気中での実験を可能とする密閉式大型グローブボックスが必要となる。これらと並行して、水噴流を用いた予備実験と数値シミュレーションも行った。本研究に関連して、平成28年度には国内学会1件、国際シンポジウム1件の発表を行い、英文論文1本を投稿した。
2: おおむね順調に進展している
本研究の基礎となる液体金属噴流の安定化に関して、水噴流を用いた予備実験を行い、内部流体抵抗によって噴流の表面形状安定化、及び一定速度化が可能であること、噴流のサイズや流速によってそれぞれ適切な内部流体抵抗の形状があること等を見出した。これにより、液体金属噴流実験へのスムーズな移行が可能となった。密閉式大型グローブボックスを整備し、液体金属を用いた実験に進む準備がほぼ完了した。ヒーターシステムの取り付けが未実施であるが、平成29年度前半には完成する予定である。真空容器内で液体金属噴流を生成する装置も設計が完了し、平成29年度には直ちに製作を開始できる状況である。
密閉式大型グローブボックスを用いて、液体金属噴流の基礎実験を行う。数値シミュレーションも並行して実施し、内部流体抵抗の形状を最適化する。真空容器内用液体金属噴流生成装置を製作し、密閉式大型グローブボックスでの試運転を経て、真空容器内での液体金属噴流実験を開始する。液体金属蒸気を検出するため、高質量数まで計測可能な四重極質量分析計を整備する。液体金属噴流へのプラズマ照射を行うための準備として、大気圧プラズマ発生装置を製作する。大気圧プラズマを用いることで、密閉式大型グローブボックス内での予備実験が可能となる。同装置は真空容器内でも運転可能なように設計・製作し、真空中でのプラズマ照射実験も視野に入れる。
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すべて 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)