研究課題
本研究では、溶融スズ等の液体金属で乱流が十分に発達した流速数m/s の自由表面流を生成し、これが超高熱負荷に耐えられるかを実験的に検証する。その結果を基に、核融合炉における受熱と排気を両立するものとして我々が提案している新概念の液体金属噴流シャワーを用いたダイバータREVOLVER-D が実現可能なことを示す。平成29年度は、液体金属を用いた実験をアルゴン雰囲気中で行うための密閉式大型グローブボックスへのヒーターシステム、電磁流量計、及びTIGアーク放電装置の設置と、真空容器内で溶融スズを循環させる実験の準備を行い、大型グローブボックスでの予備実験を開始した。予備実験では、大型グローブボックス内で低融点金属Uアロイ78の噴流(直径数mm)を定常生成し、これにTIGアーク放電を印加した。第一段階として、30 V - 10 A程度のTIGアーク放電に成功した。Uアロイ78噴流の温度は10 K程度増加し、熱負荷が印加されていることが確認された。この熱負荷では目視可能なヒューム等の発生はなかった。本研究の最終段階では真空容器内で溶融スズの噴流を生成し、これに高熱負荷を与える実験を計画しているが、熱負荷印加手法としてTIGアーク放電が有効であることが本予備実験の結果により示された。真空容器内で溶融スズを循環させる実験の準備として、小型ハンダ循環装置のモータを真空中で動作可能な超音波モータに取り替え、真空中で高温となるハンダ槽の過加熱を防止するための冷却装置を製作した。同装置を設置するための大型真空容器についても、リーク試験や四重極質量分析計の整備等を行った。本研究に関連して、平成29年度には国内学会1件、国際学会4件の発表を行い、査読付き英文論文3本が出版された。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、最終的に真空容器内で溶融スズ噴流を生成し、これに高熱負荷を与える実験を行う計画である。そのためには真空容器内で溶融スズ噴流を生成するための装置と、高熱負荷印加手法の開発が必須である。真空容器内での溶融スズ噴流生成については、市販されている小型ハンダ循環装置のモータを真空中で動作可能な超音波モータに取り替え、真空中で高温となるハンダ槽の過加熱を防止するための冷却装置を製作した。同装置を設置するための大型真空容器についても整備し、リーク試験を完了した。液体金属蒸気を検出するため、高質量数まで計測可能な四重極質量分析計を大型真空容器に設置し、その動作試験を完了した。高熱負荷印加手法については、溶接に用いられるTIGアーク放電が核融合炉においてダイバータが受ける熱負荷と同等以上の熱負荷を発生できることに着目し、これを適用するための予備実験を行なった。予備実験では安全の観点から比較的小さな電源を用いたが、TIGアーク放電によって液体金属噴流に熱負荷を与えられることが示され、より大型の電源を用いることで高熱負荷印加実験は可能という目処がついた。上記の2点が順調に進んだことにより、真空容器内での溶融スズ噴流への高熱負荷印加実験を行う準備が完了した。
今後は、真空容器内で溶融スズ噴流を定常生成し、これにTIGアーク放電を印加する実験を行う。予備実験で用いたものよりも大きなTIGアーク電源を用いて、100 A以上のTIGアーク放電印加を試みる。平成30年度前半は小型ハンダ循環装置及びTIGアーク放電トーチの大型真空容器内への据付と、真空中に冷却水、TIGアーク放電用電流、及び制御用信号を導入するための各種フランジ取り付けを行う。大容量電源を用いたTIGアーク放電による高熱負荷印加については、まず大型グローブボックス内でUアロイ78噴流に対して適用し、予備実験を行う。平成30年度後半には真空容器内での溶融スズ噴流定常生成実験と、これに対する高熱負荷印加実験を実施する。本研究に関連して、国内学会及び国際学会において発表を行う予定である。
すべて 2018 2017 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Plasma and Fusion Research
巻: 13 ページ: 1405003-1 - 5
10.1585/pfr.13.1405003
巻: 12 ページ: 1405017-1 - 20
10.1585/ pfr.12.1405017
Fusion Engineering and Design
巻: 125 ページ: 227 - 238
10.1016/ j.fusengdes.2017.07.003
http://www.nifs.ac.jp/lhdreport/mailinfo_266.html