研究課題
2019年度は、前年度までに見出した脳内新規糖化ステロール群について、発生に伴う発現変動の解析を行った。胎生12日目~生後10週目のマウスの脳から抽出した脂質を用いて、高速液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析法(LC-MS/MS)で糖化ステロールを定量した。その結果、脳内新規糖化ステロール群の一種であるグルコース化コレステロール(GlcChol)とガラクトース化コレステロール(GalChol)は、胎生12日~生後10週の期間を通して発現しており、発達に伴って発現量が変動することが明らかになった。GlcCholは発達に伴ってゆるやかに増加したのに対し、GalCholは、ミエリン形成開始時期に一致する生後10日目以降に著しく増加した。ミエリンの主要な構成成分の1つである糖脂質・ガラクトシルセラミド(GalCer)も生後10日目以降に著しく発現が増加した。GalCholが発現するグリア細胞でGalCer合成酵素をノックダウンしたところ、GalCerならびにGalCholの発現量が低下した。このことから、GalCholの発現がGalCer依存的であり、GalCholがミエリンに存在する可能性が示唆された。また、GalCholが発現するグリア細胞で酸性グルコシルセラミド分解酵素(GBA1)と中性グルコシルセラミド分解酵素(GBA2)をそれぞれノックダウンしたところ、どちらの条件においてもGalCholの発現量が低下した。この結果は、前年度までに取得したGBA1ノックアウト動物、ならびにGBA2ノックアウト動物の脳におけるGalCholの分析結果に一致していた。
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Journal of Biological Chemistry
巻: 295 ページ: 5257-5277
10.1074/jbc.RA119.012502