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2017 年度 実施状況報告書

インタラクトーム解析で切り拓く魚類補体成分の血液外での新機能同定

研究課題

研究課題/領域番号 16K14985
研究機関九州大学

研究代表者

中尾 実樹  九州大学, 農学研究院, 教授 (50212080)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード免疫 / 生体防御 / 補体 / 体表 / 粘液 / インタラクトー無 / 魚類
研究実績の概要

本年度は、昨年度までに作成した、コイ補体成分に対する特異抗体を用いて、下記の成分が体表粘液中に存在するか否かを検討した。その前に、まず、コイの体表粘液を、血液のコンタミネーションを避けて採取する方法を検討し、アルミ・ステンレスバットに麻酔した魚を置き、ゴム手袋をした手で優しく撫でることによって粘液分泌を促してトレイに粘液を集める方法が極めて効果的であることを見出した。
C3:補体系の中心成分であるC3については、アイソタイプ特異的モノクローナル抗体を用いた解析により、C3-H1アイソタイプが選択的に体表に分泌していることが明らかとなった。また、C3の活性化型であるC3bも検出されたことから、実際に体表粘液中で補体の活性化カスケードが働いていることが強く示唆された。
C3の活性化成分:古典経路を構成する成分であるB/C2-B(C2ホモログ)、C4が体表粘液中に検出された。ただし、C1qは検出されなかった。したがって、体表粘液中では、レクチン経路か通常の古典経路とは異なる活性化機構が働いている可能性がある。
第2経路構成成分:プロパージンも検出されたが、血清中とは異なる分子量のタンパク質として検出された。この原因は現在のところ明らかでない。
溶解経路成分:C5は粘液中に見つからなかったが、C7アイソタイプは微量だが検出された。このことは、C5を経由する活性化とは別に、粘液中でC7が何らかの機能を果たしていることを示唆しており、今後、C7と相互作用する分子の網羅的な探索が必要となる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

補体タンパク質の検出用抗体がかなり揃い、かつ、血液のコンタミネーション無く粘液を採取する方法が確立できたために、正確なアッセイを構築することができた。
C3を中心とした主要な補体成分の存否を明らかにすることができている。B因子に対する抗体はまだ樹立できていないが、近く用意できる見込みである。
単なる補体成分の存否だけでなく、その分子量情報から活性化型の有無など、粘液中における補体活性化の様子を伺うことができたのは、大きな収穫であった。

今後の研究の推進方策

第2経路の活性化に必須のB因子に対する抗体の樹立を急ぐ。また、粘液中における補体活性化機構、とくにC3の活性化機構を、各成分間の相互作用解析によって分子レベルで明らかにしていく。
血清中とは異なる分子量を示す成分(たとえばプロパージン)については、その存在状態を二次元電気泳動やゲル濾過法と組み合わせて解析する予定である。
最終年度は、特にC7やC2の分子間相互作用解析を進め、体表粘液における補体成分タンパク質の新規機能に迫りたい。

次年度使用額が生じた理由

本年度の研究においては、粘液中からの補体成分の検出および補体活性化経路の作動の有無に焦点を充ててデータを取得してきたため、分子間相互作用解析をまとめて次年度に行うことととした。そのために、相互解析実験に予定していた予算を次年度に回すこととした。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] Comprehensive validation of T- and B-cell deficiency in rag1-null zebrafish: Implication for the robust innate defense mechanisms of teleosts2017

    • 著者名/発表者名
      Tokunaga Y, Shirouzu M, Sugahara R, Yoshiura Y, Kiryu I, Ototake M, Nagasawa T, Somamoto T, Nakao M
    • 雑誌名

      Sci Rep.

      巻: 7 ページ: 7536

    • DOI

      10.1038/s41598-017-08000-2

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Evaluation of probiotic Bacillus aerius B81e isolated from healthy hybrid catfish on growth, disease resistance and innate immunity of Pla-mong Pangasius bocourti.2017

    • 著者名/発表者名
      Meidong R, Khotchanalekha K, Doolgindachbaporn S, Nagasawa T, Nakao M, Sakai K, Tongpim S.
    • 雑誌名

      Fish Shellfish Immunol.

      巻: 73 ページ: 1-10

    • DOI

      10.1016/j.fsi.2017.11.032

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] ギンブナCD8+Tリンパ球の細胞外寄生原虫に対する細胞障害機構の解明2018

    • 著者名/発表者名
      助田将樹、長沢貴宏、中尾実樹、杣本智軌
    • 学会等名
      日本水産学会春季大会
  • [学会発表] Homeostatic functional analysis of Tecrem, a CD46-like complement regulatory protein, on epithelial cells in carp fish2018

    • 著者名/発表者名
      Prakash H, Motobe S, Nagasawa T, Somamoto T, Nakao M
    • 学会等名
      日本水産学会春季大会
  • [学会発表] コイ補体成分B/C2-Bの組換え体作成と機能解析2017

    • 著者名/発表者名
      赤司小百合、長沢貴宏、杣本智軌、中尾実樹
    • 学会等名
      日本比較免疫学会学術集会
  • [学会発表] コイ栓球のI型インターフェロン産生能2017

    • 著者名/発表者名
      長沢貴宏、杣本智軌、中尾実樹
    • 学会等名
      日本比較免疫学会学術集会
  • [学会発表] コイ補体Properdinアイソタイプの機能解析2017

    • 著者名/発表者名
      黒木将武、吉岡和紀、長沢貴宏、杣本智軌、中尾実樹
    • 学会等名
      日本補体学会学術集会
  • [学会発表] コイ補体C7アイソタイプの機能解析2017

    • 著者名/発表者名
      野口真代、長沢貴宏、杣本智軌、中尾実樹
    • 学会等名
      日本補体学会学術集会
  • [学会発表] Functional diversity of two C7 isotypes in bony fish, a primitive vertebrate model2017

    • 著者名/発表者名
      Nakao M, Noguchi M, Akahoshi S, Nagasawa T, Somamoto T
    • 学会等名
      European Meeting on Complement in Human Disease
    • 国際学会
  • [学会発表] Functional analysis of tecrem, a CD46-like complement regulatory protein, on epithelial cells in the common carp2017

    • 著者名/発表者名
      Prakash H, Motobe S, Nagasawa T, Somamoto T, Nakao M
    • 学会等名
      The JSFS 85th Anniversary-Commemorative International Symposium
    • 国際学会
  • [学会発表] アフィニティーシルクの魚病細菌感染症診断への応用2017

    • 著者名/発表者名
      丸山真平、佐藤充、小島桂、佐藤巧視、長沢貴宏、中尾実樹、杣本智軌
    • 学会等名
      日本魚病学会秋季大会
  • [学会発表] 繊毛虫Icthyophthirius multifiliisに対する魚類CD8+T細胞の傷害機構2017

    • 著者名/発表者名
      助田将樹、長沢貴宏、中尾実樹、杣本智軌
    • 学会等名
      日本魚病学会秋季大会

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公開日: 2018-12-17  

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