研究課題
脂質代謝の変容はマスト細胞依存的なアレルギー応答性に大きな影響を及ぼす。我々は、脂質代謝酵素・受容体の欠損マウスの網羅的な表現型解析を通じて、マスト細胞応答性の制御に従来の古典的なアラキドン酸代謝とは異なるnon-canonical脂質経路が関わることを見出した。(1) 脂質代謝酵素であるホスホリパーゼA2 (PLA2) 分子群のうち、PLA2G7Bは構成的にマスト細胞内のエポキシ化リン脂質を分解してω3脂肪酸代謝物 (ω3エポキシド) を切り出し、これが酸化脂肪酸をリガンドとし得る核内受容体であるPPARγ依存的にSrcファミリーキナーゼの活性を抑制する足場タンパク質であるSrcin1の発現を減少させ、高親和性IgE受容体シグナルを亢進することによってマスト細胞の活性化を適正化することを報告した (Nat Med 2017)。(2) 血管外組織常在性のマスト細胞は、前駆細胞が組織内微小環境細胞 (線維芽細胞) と相互作用することにより形態的・機能的な成熟を遂げる。マスト細胞から分泌されるPLA2G3は組織内微小環境における細胞外リン脂質代謝を介してリゾリン脂質の一種であるリゾホスファチジン酸 (LPA) の動員に関わり、このLPAが線維芽細胞上のLPA1受容体を介してマスト細胞の成熟を制御することを見出した。(3) マスト細胞近傍の線維芽細胞から分泌されるPLA2G12Aは、細胞外リン脂質代謝を介してリゾホスファチジルエタノールアミンを生成し、マスト細胞のIgE依存的な活性化と即時型アレルギー応答を増強することを見出した。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 7件) 備考 (2件)
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http://www.amed.go.jp/news/release_20171010-01.html
http://first.lifesciencedb.jp/archives/17335#more-17335