本研究ではCRISPR-Cas9によるゲノム編集を体細胞性に応用し、癌における遺伝子異常を根本的に修復する新たな癌治療法開発に挑戦する。CRISPR-Cas9法による変異特異的遺伝子ノックアウトおよび遺伝子変異部位修復により、異常活性化癌遺伝子の特異的破壊、正常遺伝子との入れ替えを行い、癌における遺伝子異常を根本的に修復する、これまでに無い極めて画期的な癌治療の実現につなげる。当初計画に従って,変異特異的あるいは変異近傍配列標的CRISPR-Cas9 ベクターの構築、CRISPR-Cas9 ベクターのトランスフェクションとゲノム編集効果の評価を行った。ベクター作製において、単一ベクターにガイドRNA とCas9 発現配列を組込むpCAS-Guideベクター(Origene)を使用し、変異遺伝子配列に相当する、あるいは、変異近傍の野生型配列を標的とするガイドRNA をデザインして、U6 プロモーター下に挿入した。標的配列はKRAS遺伝子コドン12部分の変異配列とした。KRAS codon12 はPAM 配列を一部含む形になっているためPAM 配列を含む変異特異的ガイドRNA の構築が可能であった。それらをリポフェクション法で膵癌細胞にトランスフェクションし,増殖効率をMTT法でアッセイした。膵癌細胞はKRASコドン12部分に異なった変異配列を持つものを用い,アッセイした結果,配列特異的に種々の程度で増殖抑制効果が認められた。本結果はゲノム編集により癌細胞の増殖をコントロールできる可能性を示すものと考えられた。
|