研究実績の概要 |
ステムセルメモリーT細胞 (stem cell memory T cell: TSCM)は、ナイーブT細胞マーカーを有するメモリーT細胞で、自己複製能・長期生存能・幹細胞性を有し、抗原刺激によってセントラルメモリーT細胞 (TCM)、エフェクターメモリーT細胞(TEM)に分化する能力を持つ。研究代表者らは試験管内で活性化したマウスおよびヒトのT細胞を、Notchシグナル分子を発現しているフィーダー細胞(OP9-DL1)と共培養することでTSCM様細胞(induced TSCM:iTSCM)へと誘導する方法を確立した (Nature Commun. 8: 2017, e15338)。iTSCMのマイクロアレイ解析を行い、既存のデータベースを参照したところ、iTSCMではATR, Aurora Kb, E2F, p73, FOXM1, Plk1シグナルが亢進していた。これらのシグナル経路のうち既報の論文を参照して、最も上流に存在し、かつ発現量の高いFOXM1に着目して研究をすすめる。iTSCM誘導時にFOXM1阻害剤であるThiostrepton処理を行うことでiTSCMの誘導効率を調べる。さらにレンチウイルスベクターによりFOXM1遺伝子を導入し、iTSCM誘導に及ぼす影響を調べる。同時にFOXM1を活性化する薬剤のスクリーニングを行う。またiTSCMは他のT細胞サブセットに比べて、ミトコンドリアに依存した酸化的リン酸化能が非常に高いことが認められた。今後、メタボローム解析によりiTSCMのエネルギー源を明らかにする。
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