研究課題
アレルギー性疾患は、皮膚、肺、目、腸管など様々な組織で発症する疾患で、我が国では国民の3人に1人がなんらかのアレルギー性疾患に罹患していると言われている。アレルギー性疾患の治療はステロイド療法を中心に様々な診療科で進められているが、近年、2型自然リンパ球(ILC2)の発見によって、アレルギー性疾患の発症機構にはこれまで知られてきた抗原依存的なものと非依存的なものの2つの経路が存在することが明らかになってきた。様々なアレルギー性疾患において、ILC2はIL-33に反応することで増殖し、さらにIL-4、IL-5、IL-13などの2型サイトカインを産生してアレルギー症状を悪化させることが報告されている。ILC2の発見以前は、アレルゲンを認識したT細胞がB細胞のIgE分泌を促進し、肥満細胞を活性化することでアレルギー性疾患が発症すると考えられてきた。しかしながら、ILC2の産生する2型サイトカインは抗原非依存的にアレルギー症状を誘導することが明らかになり、さらに抗原依存的経路のIgE分泌も促進すると考えられる。そのため、ILC2の発見は単に新しいアレルギー発症機構の発見にとどまらず、これまで定義されてきたアレルギーの概念そのものの見直しを問うことになり、診断法・治療法の再検討が世界中で進められている。本研究ではアレルギー性疾患の発症が母体内の環境によってすでに決定される可能性を探るため、母マウスに気管支喘息を誘導した仔の解析を行った。その結果、気管支喘息を持つ母から生まれた仔は定常状態での変化はみられないものの、気管支喘息を誘導するとILC2や好酸球の増加が認められた。この結果は、母親がアレルギーを持つことで母体内のIL-33産生量が増し、仔のILC2を増加させることで生後のアレルギー性炎症を増悪させることを示唆した。
すべて 2017 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
J Exp Med.
巻: 未 ページ: 未
in press
Nat Commun.
巻: 8 ページ: 702
10.1038/s41467-017-00768-1
http://www.ims.riken.jp/labo/56/index.html