研究課題/領域番号 |
16K15363
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
宮崎 敦子 国立研究開発法人理化学研究所, イノベーション推進センター, 研究員 (30771521)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 認知症改善効果 / 運動機能改善効果 / ドラム(打楽器) / 介入実験 / ジャイロセンサー / 脳活動 / 身体組成 / 特別養護老人ホーム |
研究実績の概要 |
リズム反応運動は重度認知症患者でも維持している能力で、且つ、認知機能と高い相関があることから、リズムを用いたコンテンツを用いることで認知症改善プログラムになる可能性がある。 要介護度が高い方が入所している特別養護老人ホームで、ドラムを使ったコミュニケーションと演奏を行なうプログラムを30分間、週3回3ヶ月間の介入実験を行なった。指示が入らないほど認知症が重度である方でも、自らドラムを叩き、ドラムを介してコミュニケーションや演奏が可能で、30分間のプログラムを楽しんで参加出来ることがわかった。プログラム終了後の表情の変化には明らかに効果が見られる。初回のプログラム施行時前後の気分の変化を一過性運動の感情変化を評価するのに有効な主観的運動体験尺度(SEES; Subjective Exercise Experiences Scale) (McAuley and Courneya, 1994)における「疲労感」「心理的ストレス」「積極的安寧」の3因子項目により評価を行ったところ、ポジティブ感情指標である積極的安寧因子が有意に改善していた。認知症があるなしに拘らず、楽しめるプログラムであるということがわかった。 ベースラインの全員のデータから、握力と上肢の可動域が認知症スコアと高い相関関係があることがわかった。ドラム介入で、特に肘可動域は改善出来る可能性がある。認知症の程度で特徴的な身体組成がみられることがわかった。ドラム介入による運動効果から、廃用が解消され、特に右腕浮腫は介入初期に改善出来る可能性がある。 現在、介入は終了しているが、コントロール群で4名の体調不良者がいるため、全員のフォローアップ後のデータ収集が終わっておらず、介入効果についての解析が出来ていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
科研費申請時に予定していた介入実験協力施設から研究参加を断られ、新規に協力を得られる高齢者施設を探したため、実験開始が7カ月遅れた。協力施設決定後は、順調に介入実験が行えたため、介入実験は終了している。現在、フォローアップ後のデータ収集で、体調不良のコントロール群4名分が完了していないため、当初予定だった介入効果の解析が出来ていない。 初回のプログラム施行時の脳活動の測定で、計測中、bluetoothの接続が断絶してしまい、且つ最終施行時に同被験者は不参加だったため、脳活動によるコミュニケーション改善効果の検証が難しい可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
ランダム化比較試験のため、コントロール群のデータ収集後、介入効果の解析を行ない、ドラムを使ったコミュニケーションと演奏を行なうプログラムの介入効果を明らかにする。 介入効果が解析出来ていないため、改善効果は現時点で言えないが、ドラムを用いてコミュニケーションと演奏を行なうプログラムは、認知症があっても出来、且つ気分の改善が有意にあることがわかった。認知症の方のためのプログラムが少なく、選べない現場での実用化に向けて、利用できるプログラムとしてまとめていきたい。 ベースラインでの全員のデータから、認知症の程度と身体機能や身体組成の関係について新規性がある結果が出ているため、学会・論文で発表したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品を想定より安価に購入できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度の旅費の1部に充てる。
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