研究課題
(1)マウスNASHモデルを用いたNASP病態の解明平成28年度は動物実験では数種類のNASH誘発モデルを用いて野生型マウスを対象にその際に起こる膵臓の変化を検討し、膵臓に強い変化を有するNASHモデルを同定した。あるNASHモデルでは投与週数が増えるに従い膵臓組織像に変化が生じ、投与10週では膵実質に著明な炎症細胞浸潤を認め、脂肪沈着を起こした膵腺房細胞が増加することを認めた。この組織像の変化はまさにNASPの組織像であった。現在、NASH病態進展に伴う、膵組織の変化についての検討を引き続き行っており、その他の慢性肝疾患モデルについても現在検討中である。これまでにヒトNASHにおいて血中Mac-2 binding protein (Mac-2bp)が上昇し、バイオマーカーとなることを報告してきたが平成28年度はヒト慢性膵炎患者においてもMac-2bpがバイオマーカーとなることを見出し、論文報告した。NASHとNASP共通の病態バイオマーカーとしてMac-2bpが候補となりうると考えている。マウスMac-2bp ELISAの樹立もおこなった。このELISAは精度が高く、黄疸、溶血、高脂血症下での測定も可能であった。このELISAは2016年11月に市販された。このELISAを用いて種々のNASHモデルで血中濃度が上昇することを確認し、論文報告した。(2)細胞実験によるNASP病態の解明ヒトNASH進展促進には一般的に飽和脂肪酸、コレステロールが、進展抑制には不飽和脂肪酸が重要な脂質と考えられている。現在、種々の脂質を膵臓由来細胞株に投与し、主に細胞増殖、細胞死、糖鎖修飾についての検討を行っている。
2: おおむね順調に進展している
NASH病態進展に伴い発症するNASPマウスモデルを見出し、共通の病態バイオマーカーとしてMac-2bpを見出した。
(1)マウスNASHモデルを用いたNASP病態の解明平成29年度も引き続きマウスを用いた動物実験モデルでの検討を継続していく。見出したNASP誘発NASHモデルを用いてレクチンアレイ解析を中心としたグライコプロテオミクスの手法を用いた解析を行い、NASHマウスの肝臓と膵臓に共通の糖鎖修飾の変化を見いだしていく。共通の糖鎖修飾の変化が見られればヒト臨床検体を用いて膵がん症例の背景膵臓に同様の糖鎖修飾変化が起こっているかについてレクチン染色を用いて検討していく。また糖鎖修飾を変化させることが治療標的になりうるかについての検討を行うため糖鎖遺伝子改変マウス、糖鎖修飾阻害剤を用いた検討を行い、治療応用が可能かについても検討していく。(2)細胞実験によるNASP病態の解明平成29年も引き続き細胞実験も継続していく。脂質による細胞増殖、細胞死、糖鎖修飾の変化についての検討結果を基に細胞実験でも糖鎖修飾の変化が治療に応用できるかについての検討を行っていく。具体的には糖鎖修飾遺伝子改変細胞を作成し、各脂質添加による細胞増殖、細胞死についての変化を検討していく。
マウス、細胞実験の解析が予想より時間がかかり、遺伝子発現、蛋白発現の解析、組織学的検討について次年度に組み込んだため。
マウス、細胞実験を継続し、平成29年度に遺伝子発現、蛋白発現、組織学的検討について順次行っていく。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (15件) (うち査読あり 15件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件)
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