研究実績の概要 |
最終年度にあたる今年度は、予定通り研究成果の取りまとめ、発表を主に行なった。特に、熊本県荒瀬ダム撤去について、大規模な政策転換が生じる過程を分析するためのフレームワークとして政策研究において広く用いられているアドボカシー連合フレームワーク(Advocacy Coalition Framework, ACF)に依拠する形で、網羅的に収集した新聞記事から政策アクターの政策信念を整理し、その相互関係の変遷をネットワーク分析などを用いて可視化した。これらの分析の結果、連合の有する資源、とりわけ法的・公的権限の所在が政策転換の成否に大きく影響を与えていたことなどが明らかになった。荒瀬ダム撤去を求める地域アクターの政策信念に加えて、水利権制度や、ダムの管理運営体制のあり方が重要な意味を持っていたと考えられる。 また本研究を通じて、ACFは複雑な構造を持つ流域ガバナンスにおける政策過程を整理し、理解するための枠組みとして有効であること、ACFは日本で用いられることが極めて少ないが、日本を対象とした研究においても十分活用できるものであることなど、理論面での知見も得ることができた。 これらの成果は、2019年5月に行われた日本行政学会企画セッション「自然資源管理と環境ガバナンス」において報告した。また、学会での報告を踏まえて改定した原稿を、政策研究に関する海外の学術誌に投稿した。現在、査読中であり、研究成果の国際的な発信につなげていきたいと考えている。
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