研究課題/領域番号 |
16K16313
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
安斎 勇樹 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 特任助教 (30738331)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ワークショップ / ファシリテーション / アクティブラーニング |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、創造性育成のためのワークショップにおける効果的なファシリテーションの方略を明らかにすることである。ファシリテーションとは、当日の状況に応じて指示を変更したり、学習者に問いかけや助言をしたりすることで、学習者のグループ活動を柔軟に支援することである。その即興的な性格からファシリテーションに関する実証研究は乏しく、現場の勘に頼らざるを得ないという課題がある。熟練者のファシリテーションの技術の多くは本人も言語化しにくい暗黙知で構成されている。そこで、ものづくりにおける技術伝承など、暗黙知の抽出が課題となっている領域の先行研究のレビューを行い、暗黙知を調査するための方法論について整理を行った。熟練者の多くは、ワークショップのプログラムの導入段階は綿密なシミュレーションを行い、ファシリテーションのイメージを持っているが、プログラムの後半につれて計画の度合いが下がり、その場に応じて臨機応変に対応していることがみえてきた。他方で、初心者に対する聞き取り調査からは、状況が読みにくいプログラムの後半だけでなく、場の雰囲気作りにおいて重要な導入段階に対してもファシリテーションの困難感を感じていることが仮説としてみえてきた。今後は、プログラムの各フェーズにおけるファシリテーション方略を明らかにすべく、具体的な聞き取り調査と参与観察の調査を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画では、熟練したファシリテーターにはプログラムの設計段階から予定されていた「計画されたファシリテーション」と、当日の現場の状況に応じてなされた「状況に応じたファシリテーション」が存在することを想定しており、聞き取り調査では前者をあぶり出す予定だった。プレ調査的に聞き取り調査を実施したところ、想像していた以上に「計画されたファシリテーション」が言語化されず、「その場に応じてやる」といった発言に集約されてしまうことがわかった。改めて技術伝承領域などで行われてきた暗黙知調査の手法を再レビューし、聞き取り調査の工夫の仕方などを再整理し、現在は聞き取り調査を随時進めている。また、実際のワークショップを見学可能な協力者がなかなか見つからず、3名程度に人数を減らして調査することも検討している。(先行研究では、2名程度の熟練者を対象にするやり方でも問題ないと思われれる)
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今後の研究の推進方策 |
上記の課題から、対象者の人数を絞り、具体的な実践に対する参与観察を通して調査を進めていく計画を立てている。参与観察を踏まえて、事例をもとに具体的な聞き取り調査を実施し、具体的な知見が出せるように努めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
プレ調査で不測の結果が起きたことから調査の計画が遅れ、本調査に進むことができなかったため、本調査にかかる予定だった人件費や、学会発表費の支出が今年度はなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は具体的に本調査を進めるため、本調査の人件費や、成果発表のための旅費として支出する計画である。
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