研究課題/領域番号 |
16K16701
|
研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
草野 友子 京都産業大学, 文化学部, 講師 (90733402)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 新出土文献 / 故事 / 中国古代思想史 / 国際情報交換 / 中国:台湾 |
研究実績の概要 |
1.新出土文献の研究:本年度は、戦国時代の周の昭文公の共太子に対する訓戒書、北京大学蔵西漢竹書『周馴(訓)』の研究を中心に進めた。整理者は本篇を『漢書』芸文志・道家類の『周馴』十四章と見なしているが、すでに異なる見解も提示されている。そこで本篇の思想的傾向を明らかにするために、『周馴』に引用されている『詩』に注目し、検討を進めた。この成果は、2017年5月に国際学会において発表予定である。また、本年度は陳偉教授(武漢大学)による戦国竹簡の概説書『楚簡冊概論』を、湯浅邦弘教授(大阪大学)監訳のもと草野と曹方向氏(日本学術振興会外国人特別研究員)が抄訳し、『竹簡学入門――楚簡冊を中心として』と題して出版した。本書は「楚簡の基礎知識」「発見と研究」「整理と解読」「出土文献の研究」の四章構成(草野は第一章~第三章を担当)で、初学者のみならず専門家にも有益な情報を提供している。
2.研究の整理・紹介:2016年7月にはワークショップを開催し、草野は日本の中国古代思想史研究において観念史アプローチで貢献した三氏(竹内照夫・加藤常賢・森三樹三郎)の業績内容を俯瞰し、その特色を論じた。その後、栗田直躬を加えて改訂した中国語版が『東亞觀念史集刊』に掲載予定である。また、中村未来氏(大阪大学招へい研究員)、海老根量介氏(学習院大学助教)と共に2015年に日本で発表された出土文献研究の成果を概述し、草野は戦国秦漢の総合的研究を担当した(『簡帛』第14輯に掲載予定)。さらに『漢字学研究』第4号の「古文字学研究文献提要」(2014年に日本で刊行された研究書の紹介)にて郭店楚簡の研究書を解説した。
3.学術調査:2016年9月に上海博物館、2017年2月に安徽大学を訪問し、竹簡の実見調査および現地研究者との会談を行った。安徽大学の戦国竹簡には『詩経』、楚史、孔子語録等が含まれており、今後の公開が待たれる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は当初予定通り、北京大学蔵西漢竹書『周馴』を中心に研究を進めた。また、翻訳事業、研究の整理・紹介、学術調査等を通じて、新出土文献の「故事」をどのように取り扱うべきかについて確認・再考することができた。その一方で、『周馴』は長篇であるため、本年度は『周馴』に引用されている『詩』の検討のみにとどまった。次年度は、本篇に引用されている『書』や関連する伝世文献・出土文献との比較を通して、『周馴』の思想的傾向を明らかにしていきたい。また、清華簡の伊尹故事についてはまだ検討が不十分であるため、引き続き研究を進めていきたい。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度も引き続き、新出土文献の「故事」に関わる文献を中心に研究を進める。2016年4月には清華簡の第六分冊が刊行され、そこには『鄭武夫人規孺子』『鄭文公問太伯』など春秋時代の鄭国に関わる故事が収録されていた。このような最新の資料についても研究対象としたい。 研究成果は、研究誌や国内外の学会・研究会などで随時発表する予定である。また、竹簡の所蔵先や研究機関に赴いて実見調査・学術交流を行うことで、研究の精度を高めたいと考えている。
|