研究課題/領域番号 |
16K16701
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
草野 友子 大阪大学, 文学研究科, 助教 (90733402)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 新出土文献 / 故事 / 中国古代思想史 / 国際情報交換 / 中国:台湾:香港 |
研究実績の概要 |
1.新出土文献の研究:周初の許国封建に関する文献、清華簡『封許之命』についての研究成果を発表することができた。本篇は、西周・春秋時代の青銅器の銘文によく見られる冊命と同様の形式で書かれたものであり、周王から呂丁に授けられた車馬や器物などが詳細に記録されている。研究成果の一つは、全体の釈読を提示した上で、その内容を明らかにしたものであり、『待兼山論叢(哲学篇)』に掲載された。もう一つは、本篇において車馬や宝玉・装飾品などの器物には「易(賜)」字、青銅器には「贈」字が使用され、明確な使い分けがなされているのではないかと指摘したものであり、世界漢字学会第七届年会において中国語で口頭発表を行った。また、中国古代の女性観がうかがえる文献について、資料収集・整理を行った。特に、北京大学蔵秦簡牘(北大秦簡)の一篇で、女性に対する教誡の文献である『教女』の釈読を進めた。その成果は次年度に発表予定である。
2.書評の執筆:新出土文献の研究論文集である谷中信一編『中国出土資料の多角的研究』(汲古書院、2018年3月)の書評を執筆した。本書には北大秦簡『教女』の整理者である朱鳳瀚氏による釈文の再検討が掲載されているなど、本研究とも関連が深い研究成果が収録されているため、非常に参考になった。
3.共著の刊行:中国思想の入門書である『中国思想基本用語集』(ミネルヴァ書房)の資料編の執筆を担当した。特に、「易解説」の部分では、上博楚簡『周易』について触れ、新出土文献の最新情報を盛り込むことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、清華簡『封許之命』の釈読と文字に関する個別の検討を行い、その研究成果を発表することができた。また、本研究の大きな課題の一つである中国古代の女性観がうかがえる文献について、資料収集・整理と釈読を進めることができた。ただ、新型コロナウイルスの影響で中国に学術調査に行くことができなかったこと、および北大秦簡『教女』の研究成果を発表するには至らなかったことが反省点であり、次年度の課題としたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き、新出土文献の「故事」に関わる文献を中心に検討を進める。新たに公開された資料の中に関連文献が含まれていた場合は、それも研究対象とする。研究成果は、国内外の学術雑誌や学会・研究会等で随時発表する予定である。また、竹簡の所蔵先や研究機関に赴いて実見調査や学術交流を行い、研究の精度を高めたい。さらに、最終年度である次年度には、若手研究者を中心とした国際学会の開催および研究書の刊行を計画しており、その実現に向けて準備を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で、中国における学術調査や国内出張・研究打ち合わせ等を取りやめにしたこと、また中国で刊行された関連図書の入手が難しくなったことから、次年度使用額が生じた。その分は、次年度に計画している国際学会開催および研究書刊行に使用する予定である。
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