研究課題/領域番号 |
16K16784
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
小田 夕香理 富山大学, 学術研究部芸術文化学系, 講師 (70511880)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ブロンテ / 英文学 / 女性文学 / 20世紀 / ヴィクトリア朝 |
研究実績の概要 |
2020年度は、1945年以降の英国女性作家によるブロンテ姉妹に関連する作品のうち、特に研究対象として相応しい作品(文学的価値や、ブロンテ姉妹の要素を用いつつ、独自性のある作品となっていることを基準に精選)として2019年度までに選出した作品のなかから、最も多く選出したシャーロット・ブロンテに関連する作品について引き続き読解・分析を進めるともに、エミリ・ブロンテに関連する作品についても読解・分析を行った。また、1945年以降の英国女性作家の作品について、ブロンテ姉妹と関連があるものをあらためて探索し、研究対象とすべき作品であるかどうか検討する作業もこれまでと同様に継続して行い、研究内容のさらなる充実を目指した。 2020年度に特に注力したのは、ダイアン・セッターフィールドの『13番目の物語』(2006年)の分析である。『13番目の物語』には、主にシャーロットの『ジェイン・エア』との関連が指摘されてきたが、エミリの『嵐が丘』の要素もまた重要な役割を担っており、この作品のなかにこれら二つの作品の影響を明確に読み取ることができた。考察を進めるにあたり、ウィルキー・コリンズの『白衣の女』やヘンリー・ジェイムズの『ねじのひねり』など、この小説に関連する他の作家の作品の読解も行うことで作品の理解に努め、研究の質の向上に努めた。この成果の一部は、2021年3月に開催された、日本ブロンテ協会関西支部2021年大会(オンライン大会)にて発表し、この発表の内容をもとに論文を作成する作業も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度は、新型コロナウィルスの影響を大きく受けた。オンラインで業務を行うために多くの時間を要したこと、在宅勤務となっていた期間は研究室所在の文献を使用することが難しかったことにより、研究に遅れが生じた。また、『13番目の物語』の分析にあたり、この作品に関係する他の作家の作品の読解にも時間をかける必要があったために想定以上の時間を要したという側面もあり、本研究を完了させるために必要な作業、計画についてあらためて検討を行う必要が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、エミリ・ブロンテとアン・ブロンテに関する作品の読解・分析と、三姉妹それぞれの関連作品の特徴や傾向の分析を主に行う。三姉妹の二人以上と関連のある作品の分析も行うが、シャーロット・ブロンテの関連作品に含まれるものとしてすでに分析に着手した作品もあるため、2021年度に新たに分析する作品は厳選した上で必要と判断したもののみとする。以上の作業を行った上で、三姉妹が戦後の英国女性文学史のなかでどのような役割を担ってきたのか、分析を行った関連作品に描かれる女性の人生や女性作家のあり方の変遷においてブロンテ姉妹の作品がどのような意味をもつのかを考察し、最終的には、戦後の英国文学史とブロンテ関連作品の系譜を照らしあわせ、英文学史の流れを見直す。ブロンテ姉妹の関連作品分析に必要な文献の入手を行うとともに、本研究の総括のために、19・20世紀の英国の文化、社会、文化に関する文献、ブロンテ姉妹に関する文献なども幅広く入手して考察を深め、成果を論文にまとめる。また、新型コロナウィルスの状況を考慮しながら、学会での情報収集や成果発表も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
情報収集のため参加を予定していた国外の学会が、新型コロナウィルスの影響で延期となったこと、国内の学会も、中止またはオンライン開催となったことにより、旅費の使用額が少なくなったことが次年度使用額が生じた主な理由である。これについては、2021年度に学会が開催される場合の旅費として使用するほか、研究をさらに充実させるための文献・資料の入手に使用する予定である。
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