研究課題/領域番号 |
16K16882
|
研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
石井 康毅 成城大学, 社会イノベーション学部, 准教授 (70530103)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 文法項目 / 教科書 / コーパス / 英語教育 |
研究実績の概要 |
中学校と高等学校用の英語検定教科書を技能別サブコーパスに分け、現在の標準的な中高の学習において、文法知識が有機的に利用されている場面が適切に、そして適切な頻度で提示されているかを検証し、さらに、学習者コーパスと学習者のモデルと考えられる言語資源データにおける文法項目の使用頻度の分析結果と合わせて、教科書を通して学習者が学習・使用する文法項目の実態と、現在の教科書での学習状況では不十分だと考えられる文法項目を明らかにすることが本研究の目的である。 平成28年度のデータ整備としては、本年度使用開始となった中学校用の検定教科書(6社による18点)の電子化と技能タグ付与を完了した。高等学校用の教科書については、既に電子化を済ませているコミュニケーション英語I・II・IIIの一部に対して技能タグ付与を行った。 データ分析としては、各技能別サブコーパスにおける文法項目の頻度を集計するパイロット調査を行い、正しく頻度を集計できることを確認した。 文法項目の定義については、これまでの研究で、各項目のレマ・語形・品詞のパターンによる定義を作成済みであるが、BNCとの比較を念頭に置いていたため、BNCのデータ構造に合わせた品詞タグ・フォーマットを利用した定義であった。しかしながら、BNCと同様の品詞タグ・レマを付与するためには有償サービスを利用する必要があることから、追試や同様の研究における本研究の成果の利用を可能にするために、無償で広く使われているTreeTaggerによる出力結果を利用した定義に書き換えた方がよいという判断に至り、この書き換え作業を開始した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高校のコミュニケーション英語の教科書に対する技能タグ付与について、教科書点数の多さから予想以上の時間がかかり、まだシェアの高いものしか終了していない。引き続き謝金を利用して技能タグ付与の作業を進める。 文法項目定義のフォーマット変更も予定外であった。既に作成済みの文法項目定義からの機械的な変換はできないため、ひとつずつ検討しながら再作成する必要があり、この作業はまだ着手したばかりである。時間のかかる作業ではあるが、この文法項目の再定義により、本研究に対する追試や本研究の成果の利用が容易になることから、本研究の成果を最大化するためには不可欠な作業である。 文法項目の定義フォーマットが違うものであっても、正規表現によるパターンを利用して各種言語資源のテキストデータに対して集計を行うという手法は共通であるため、言語資源と文法項目の定義が揃えば集計作業は一気に行うことができるため、上記の問題が研究目的達成にとって大きな障害になることはない。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、高校のコミュニケーション英語の教科書の技能タグ付与をシェアの高いものから順次行い、言語資源データの整備を進める。 同時に文法項目フォーマットの再定義作業を進め、実際に文法項目の頻度調査を行う。 これらのデータに基づき、結果を統合して、日本人英語学習者の文法項目ごとの学習・使用状況を明らかにする。さらに母語話者の文法項目使用状況も考慮しながら、日本人英語学習者がうまく使えていない文法項目を明らかにし、文法の観点で学習者のコミュニケーション力向上のために必要な対策を検討する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
データ整備に時間がかかり、また文法項目の定義フォーマットを変更する検討を始めたことにより、研究成果発表・情報収集のための学会出張が当初の予定通りできなかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
今年度は研究成果発表・情報収集のための学会出張を予定している。
|