中学校と高等学校用の英語検定教科書をリーディング用テキスト・ライティングモデル等の技能題材別サブコーパスに分け、現在の標準的な中高の学習において、文法知識が有機的に利用されている場面が適切に、そして適切な頻度で提示されているかを検証し、さらに、学習者の作文・発話コーパスと学習者のモデルと考えられる言語資源データにおける文法項目の使用頻度の分析結果と併せて分析することで、学習者が標準的に学習・使用する文法項目の実態と、現在の教科書での学習状況では不十分だと考えられる文法項目を明らかにすることが本研究の目的である。 平成28年度と平成29年度で、平成28年度使用開始の中学校用の英語教科書全点と、平成25年度・26年度・27年度使用開始の高等学校用のコミュニケーション英語I・II・IIIの教科書全点の電子化及び技能・題材タグ付与を完了した。文法項目の定義については、追試や同様の研究における本研究の成果の利用を可能にするために、全文法項目の定義を無償で広く使われているTreeTaggerによる出力結果を利用したものに書き換える作業を行い、また、文法項目自体の見直しも行い、結果として263項目・501種(肯定・否定、平叙・疑問等の文種別の異なる変種を数え上げた場合の項目数)から成る文法項目リストを完成させた。 平成30年度は、平成25年度・26年度使用開始の高等学校用の英語表現I・IIの教科書の電子化及び技能・題材タグ付与作業を完了し、教科書の技能・題材別データを完成させた。その上で、学習者コーパス・母語話者データと併せて頻度調査と分析を行った。 本研究により、日本人英語学習者が教科書を通して学習する文法項目の中で扱いが不十分だと考えられる項目や、日本人英語学習者にとって習得が困難な項目が明らかになり、今後の教材・教育法を改善するための基礎データを得ることができた。
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