研究課題/領域番号 |
16K17036
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
橋本 有生 早稲田大学, 法学学術院, 准教授 (90633470)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Mental Capacity Act 2005 / 自由剥奪セーフガード / 自由の保障のためのセーフガード / 障害者権利条約 / 支援付き意思決定 / シカゴ宣言 / 高齢者の人権 |
研究実績の概要 |
2017年度は、前年度の調査において明らかにしたイギリスの自由剥奪セーフガード(Deprivation of Liberty Safeguards, DoLS)の問題点を克服するために、現在提案されているいくつかの立法政策を調査し、国内の研究会にて報告を行った。 イギリスの法律委員会は、2015年7月7日にDoLS改正の提案のためのコンサルテーションペーパーを公刊、寄せられたパブリックコメントに基づき、2017年3月13日に最終報告書を公刊した。これらの改正作業においては、Cheshire West事件最高裁判決(2014年)後に劇的に増加した自由剥奪の認許の申請に対応するための制度設計が検討された。最終報告書では、DoLSに規定された複雑で形式的な手続きを減らし、保護を必要とする国民が利用しやすい制度を低コストに実現することを目標にDoLSに代わる新しい制度として“Liberty Protection Safeguards”(「自由の保障ためのセーフガード」、LPS)が提案された。2017年10月30日、政府はLPSの導入を前向きに検討する旨の暫定的決定(interim response)を表明し、現在進行中の精神保健法(Mental Health Act, MHA)の改正作業と並行して手続きを進めることを明らかにした。DoLSの運用において問題となっていたMHAとの適用関係について調査することにより、わが国の精神保健福祉法と成年後見法との適用関係についても示唆的な研究となった。 また、香港中文大学よりMimi Zou助理教授を招き、近年アメリカの研究者を中心として作成された高齢者の人権に特化した国際文書である「シカゴ宣言」や中国の新しい立法に言及しながら、高齢者保護法の国際的な潮流について紹介をいただいた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年度は、計画のとおりイギリスに赴き資料収集を行うことができた。また、2017年3月に公刊された報告書に基づき、イギリスにおける最新の改正案について調査を進め、イギリス法研究会にて報告を行った。 さらに、前年度の報告書において「今後の研究の推進方策」に示したとおり、香港中文大学のZou助理教授との共同研究を通じて中国における最新の議論を紹介していただくことができた。その講演内容についても翻訳を行い、公刊済である。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は、障害者権利条約の提示する「支援付き意思決定」の理念を法的な枠組みに落とし込んだ場合にいかなる仕組みが考えられるかについて検討する。そのために、イギリス法だけでなく、カナダ法やオーストラリア法等から参考となる制度を調査し、論文にまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
他の研究費を利用してイギリスへの渡航が可能となったため。 本年度使用しなかった額は、イギリスからの研究者の招待講演に使用する予定である。
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