研究実績の概要 |
研究の目的:本研究は、判断能力が不十分な成年者が、医療やケアを受けるためにその身体の自由に関連する何らかの決定を受ける必要性が生じた場合に、一方でその者の「安全」を最大限に確保しつつ、他方で「自律的な個人として尊重される」という基本的人権に対する侵害を最小限にとどめるためには、どのような法的システムを整備しなければならないかを検討し、提言を行うことを目的とした。 実施計画:英国法の研究(課題A)、障害者権利条約の研究(課題B)、その他外国法の研究(課題C)を通して、わが国が将来、判断能力が不十分な成年者の身体の自由に関する決定が行われる際に導入すべき適正手続のあり方を検討することとした。 研究成果:課題Aについては、まず2014年に実施された2005年精神能力法の立法後調査、政府意見書を手掛かりに、現行法に対して指摘される問題点を探った。次に、イギリスの自由剥奪セーフガード(Deprivation of Liberty Safeguards, DoLS)の問題点を克服するために、提案されているいくつかの立法政策を調査した。そして、自由剥奪セーフガードに代わって導入された自由の保障ためのセーフガード(Liberty Protection Safeguards, LPS)の中身を明らかにした。 課題Bについては、障害者権利条約のうち、本研究課題と特に関係のある12条(法的能力の平等を保障する規定)及び14条(身体の自由を保障する規定)について条約起草過程の議論状況から、締約国の実施状況について、国連障害者権利委員会がまとめたレポートを精査し、その規定が締約国に要請する内容について検討した。 課題Cについては、中国から研究者を招聘し講演会を開催、その内容を日本語訳して公表している。また、障害者権利条約の批准に当たり、欧州各国の対策の状況を調査し、論文として公表した。
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