旧来より、J. S.ミルの価値論は需給均衡説と考えられている。しかしながら、彼の価格モデルは、価格と数量が同時決定される法則に全く支配されていない。後世の経済学者はミルが価格設定で使用した「Equation」という用語を「等式」ではなく「方程式」と誤解している。 ゆえに、ミルのシステムは、需給均衡説ではなく、時間を伴う逐次プロセスモデルであろう。ジェンキン(1868)は、ミルのシステムを、現在のミクロ経済モデルとほぼ同じであると誤読した。さらに、ジェンキンに影響を受けたマーシャル(1879)もミルの相互需要説を誤読し、経済学に均衡条件と安定条件の研究というテーマを導入した。以上の点を論証した。
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