研究課題/領域番号 |
16K17108
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
牛島 光一 筑波大学, システム情報系, 助教 (80707901)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 30バーツ医療保障制度 / 母親の教育水準 / 子供の健康 / 大気環境政策 / 自動車運行規制 / 健康投資 / 予備的貯蓄 |
研究実績の概要 |
平成29年度は本研究課題の2年目(3年間のうち)にあたる。本研究課題は、(1)公共政策による健康知識の普及が小児期の子供の死亡率に与えた影響、(2)大気環境政策によって健康投資としての家計の居住地選択がどのように変化したか、の2つのテーマで構成されている。平成29年度におけるそれぞれの研究課題の進捗状況は以下の通りである。 (1)のテーマでは、タイで2002年に実施された医療福祉政策による健康知識の普及という処置効果の強さが母親の教育水準によってことなることを通じて、健康知識と子供の死亡率の関係を調べる。この研究に先立ち行っていたタイの医療福祉政策の導入と家計の予測できない医療支出に対する貯蓄行動の関係をしらべた論文が4月にRevise and Resubmitになったためこの改定作業を行い3月に再投稿した。 (2)のテーマでは、2000年代前半に1都3県(日本)で実施されたディーゼル車排出ガス規制に着目し、大気環境の改善に対して人々がどの程度の便益を感じているのかを調べる。分析では、排出ガス規制以前の交通量と年の交差項を操作変数として、大気環境と地価の内生性の問題に対処した。これまではアウトカムとして地価に着目してきたが、医療費などもアウトカムにできないか多面的に検討を行ったが、本研究の分析のフレームでは識別が困難であることがわかったため、現時点で論文をファイナライズすることに決めた。大気環境と地価の関係を構造的にとらえるために、地価だけでなく医療費もアウトカムとする研究について新たな計画をたて既に開始している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)、(2)のどちらのテーマについても、当初の計画における分析等は全て完了した。 テーマ(1)においては、母親の教育水準が高いほど子供が入院すべき病気の時により、病院を受診しやすいことを二つの自然実験を利用することで明らかにした。テーマ(2)においては、ディーゼル車排出ガス規制による大気汚染の改善は、ディーゼル車の交通量が多いところほど大きく、また、地価は上昇していることを識別した。さらに、これの改善の経済厚生を計算し、疫学的な便益と人々が認識する経済厚生の差を測った。
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今後の研究の推進方策 |
(1)、(2)のどちらのテーマについても、論文を書き上げる段階まできている。現在は、(2)のテーマで考えてきた、大気環境と地価の関係をさらに構造的に考慮すべく、大気環境の悪化が地域の医療費と地価に与えた影響を評価するための研究を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた国内学会の出張を1件キャンセルしたため\23,998の次年度使用額が生じた。現在、本研究課題から派生した研究テーマについてデータベースの構築を行っているため、そのための人件費として使用する。
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