研究実績の概要 |
平成30年度は本研究課題の最終年度(3年間のうち)にあたるため、期間全体の成果を簡潔に報告する。本研究課題は、(1)公共政策による健康知識の普及が小児期の子供の死亡率に与えた影響、(2)大気環境政策によって健康投資としての家計の居住地選択がどのように変化したか、の2つのテーマで構成されている。 (1)のテーマでは、昨年度にRevise and Resubmitになっていた論文がEconomic Development and Cultural Changeに採択された。また、外生的な変動による母親の教育水準の向上が小児期の子供の病気の治療を介して死亡率を減少させたことを明らかにした。 (2)のテーマでは、2000年代前半に1都3県(日本)で実施されたディーゼル車排出ガス規制に着目し、大気環境の改善に対して人々がどの程度の便益を感じているのかを調べた。このプロジェクトを通じて、これまでのストーリーおよび分析方法を見直し、また、議論すべきアウトカムを増やした。これまでの分析では、大気汚染物質としてSPMに着目し、公示地価の調査地点の大気汚染濃度を予測し、近隣のディーゼル車の交通量が多い地点ほど、内生変数である大気汚染濃度を低下させ、地価を向上させるという分析を行ってきたが、着目している政策はSPM以外にもNOXを削減しているため、この分析フレームワークでは論理的な整合性に問題があると考え、Currie, Davis, Greenstone, Walker (2015 Ame Econ Rev)と同様に、まずは複数の大気汚染が減少したかどうかを調べ、その後に、同じ分析のフレームワークで地価が減少するのかを調べることとした。予備的な分析結果は得られており、推定モデルを精緻化しても結果は頑健で阿東と思われる。今後は、さらに、乳幼児の健康をアウトカムとした分析を追加し、論文を関せさせる。
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