本研究では、乳幼児期の子どもへの関わりと子どもの発達に関する実証分析を行っている。国立社会保障・人口問題研究所「第14回出生動向基本調査 結婚と出産に関する全国調査 夫婦調査の結果概要」によると、出産前に就業した女性が出産一年後も就業を続けている(育児休業を含む)割合は、約4割しかいない。日本において女性が出産を機に職業生活中断する一つの理由として、「子どもは母親の手で育てなければならない」という社会規範を信じている人々の存在が考えられる。そのため、本研究では、乳幼児期の母親の就労とその後の子どもの発達の関連を明らかにする研究を行っている。 本年度は、「乳幼児期の母親の就労とその後の子どもの発達に関する動学的分析」を中心に研究を進めた。分析の結果、乳幼児期の母親の就労がその後の成績の変動と関連がないことが分かった。分析の結果をまとめ、査読雑誌への投稿準備を進めている。 また、現在の日本において子どもが置かれている状況を把握するために、いくつかの分析も行った。第一に、日本、中国、アメリカのデータを用いて「子どもの学力の性差に関する分析(共著)」を行った。分析の結果、科目の成績や選好への性差は、国によって異なることを示し、社会文化的背景が影響している可能性を示唆した。本研究は、国際学会で研究報告を行い、英文査読雑誌に掲載されている。さらに、評価の性差を検討するために、日本における「高賃金の抽象タスクへの従事機会の不均等と男女間賃金格差(共著)」に関する研究も行った。分析の結果、タスク従事の決定構造の男女間の違いが男女間賃金格差を一部説明することを示した。
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