本研究の目的は、消費者行動研究の視点から市場が創造されるメカニズムを明らかにし、脱コモディティ化のための市場創造戦略を提示することである。平成30年度は、前年度の研究成果を踏まえ、消費者のブランド知識とブランド選択行動に着目した脱コモディティ化のための市場創造戦略に関する実証研究を行った。当初は、それぞれの着目点に対して異なる実験調査を行い、研究成果を得ようと想定していたが、これらを統合して実験する調査設計を考案することができたため、大幅に調査手続きを削減することができた。1つの実験調査にエフォートをかけることができたため、想定より多くの消費者に対して多様な実験環境を与えることができた。実験調査からは、ブランド知識とブランド選択行動の相互作用から新製品が消費者に受容される契機を発見することができ、脱コモディティ化のための市場創造戦略を構築するための有益な研究成果を得ることができた。具体的には、コモディティ化に直面した消費者のブランド選択行動においては、ブランド間の知覚差異を獲得しようと、新しい情報を既存スキーマに取り込もうとする「同化」という認知機能を駆動させることが明らかになった。加えて、ブランド知識が豊かな消費者に注目すると、新しい情報をさらに有機的なものにするために、「同化」ではなく「調節」という認知機能を駆動させ、「同化」による認知機能を駆動させるときよりも、当該ブランドに対する知覚差異をさらに獲得することが明らかになった。
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