本研究の目的は,企業外部に向けた財務報告と,生産活動をはじめとする企業内部での経営意思決定との相互的な影響について考察することである.本研究の主たる成果として,第一に,開示規制の導入によって,かえって企業内部の情報環境が悪化して生産活動が非効率的になる結果,社会厚生が減少するケースが存在することを示した.第二に,参入の脅威が存在する状況下においては,既存企業は参入阻止などを目的として,楽観的な生産計画を開示する可能性が存在することを明らかにした.第三に,直面する不確実性のタイプや競争のタイプに依存して,企業が開示情報に加えるバイアスの程度が異なりうることを示した.
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