研究課題/領域番号 |
16K17228
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小川 和孝 東京大学, 社会科学研究所, 助教 (80734798)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 社会階層 / 不平等 / 労働市場 / 技能形成 |
研究実績の概要 |
本年度は、文献レビューおよび基礎的な分析を中心に進めた。社会学の社会階層論の分野における近年の理論的な発展について、主に検討した。これにくわえて、関連する分野として労働経済学・比較政治経済学の分野の文献のレビューも行った。これらを基にして、日本社会において訓練・技能形成の制度がいかにして社会的不平等を生み出すかについて、生成メカニズムの描出を試みた。 具体的には、日本社会におけるレントの現れ方に注目した。レントとはある資産の供給が制限されており、需要が供給を超過していることにより、その資産からのリターンが完全競争市場において生み出されるリターンを上回ることであると定義される。本研究では、こうした資産としての労働者の持つ技能に焦点を当て、不完全労働市場において取引費用が伴う際には、内部労働市場における訓練を通じてレントが生じることに焦点を当てている。内部労働市場の発達によって訓練が個別企業ごとに分断的に行われる日本社会においては、技能形成における雇用主の関与が大きくなる。こうした状況では技能は個別企業において特定的なものとみなされ、また技能の供給も雇用主が制限をくわえることが可能となる。このために、技能の特定性と供給の制限が生み出すレントが、一つの企業において蓄積し、特定の労働者に構造的な有利さをもたらすことを論じた。 分析で得られた知見のうち、いくつかは和文・英文の学術雑誌や、国内外の学会において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は採択1年目であったが、文献のレビューはおおむね計画通りに進み、さらに研究成果を複数にわたって公開することができた。エフォートの面でも当初計画のとおりに配分することができた。また、研究費についても、設備備品費・消耗品費・旅費として、効率よく執行することができた。以上より、本研究課題の当該年度までの進捗状況は、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
採択2年目となる来年度は、研究代表者の所属機関が変更になる。新たな所属機関における資料の利用可能性などを踏まえて、研究計画を随時見直したい。研究成果の面では国際的な発信ができるよう、意識的に努める。
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