本研究の学術的意義は,デュルケム社会学の同時代的意義を,19世紀末の社会史的・思想史的コンテキストとの対照を通じて明らかにしたことである.パーソンズの設定したデュルケム解釈の枠組みを相対化する作業を通じて本研究は,デュルケムの近代社会構想の独自の理論的意義を明らかとした上で,有機的連帯論から職能団体論へとその近代社会構想が変化した背景をデュルケムの国家論との関係から整理した.加えて本研究は,デュルケムの問題関心の共有者としてのシェフレの存在を明らかにした.さらに本研究は,日本においてデュルケムの政治社会学の現代的意義を追求した成果の1つとして作田啓一の社会学を位置付ける可能性を示唆した.
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