研究課題/領域番号 |
16K17346
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
佐藤 寛 関西学院大学, 文学部, 准教授 (50581170)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 閾値下うつ病 / 認知行動療法 / マインドフルネス / 無作為化比較試験 |
研究実績の概要 |
閾値下うつ病(subthreshold depression)とはうつ病の診断は満たさないが臨床的に重大な抑うつ症状を示す状態であるとされ,うつ病には及ばないものの深刻な精神健康上の問題を引き起こす。本研究では,閾値下うつ病に対する従来型の認知行動療法と,新世代の認知行動療法であるマインドフルネス介入の有効性を直接的に比較した無作為化比較試験を実施する。閾値下うつ病の対象者のスクリーニング手続きとして,まずCES-Dのカットオフ値(16点)を基準に抑うつ症状の強い対象者を一般大学生から抽出する。次に,SCIDにおいてうつ病の診断基準を満たす対象者を除外する。この2段階のスクリーニングによって,抑うつ症状は強いがうつ病の診断には至らない閾値下うつ病の対象者が抽出される。 平成28年度は,翌年度以降の無作為化比較試験において使用する,従来型の認知行動療法のマニュアルと,マインドフルネス介入のマニュアルを作成した。いずれの介入も5~8名の集団形式で実施することを想定したものであり,90分×5セッションから構成されている。これらのマニュアルに基づいて介入を実施するセラピスト2名のトレーニングが間もなく終了する見込みである。トレーニングを受けたセラピスト1名が介入の実施を担当し,もう1名のセラピストも介入補助者として参加する予定である。閾値下うつ病に対する臨床経験の豊富な心理士1名(研究代表者)もセッションに参加し,セラピストに対してスーパービジョンを行う。 本研究のプロトコルは「関西学院大学人を対象とする行動学系研究倫理委員会」において倫理審査を受けており,近日中に承認を得る見込みとなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者は本研究課題申請後の2016年3月をもって関西大学社会学部を退職し,本研究課題の採択が内定した2016年4月より関西学院大学文学部へと着任した。研究代表者の異動に伴う新たな研究室の立ち上げを行ったため,スタッフの確保や倫理委員会への申請といった準備作業が加わった。幸いなことに新たな研究室においてもスタッフの確保にはめどがつき,2017年度早々には当初計画からの遅れを取り戻せる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度には無作為化比較試験を行う。従来型の認知行動療法を受ける条件,マインドフルネス介入を受ける条件,および通常のケアによる統制群を設定し,2つの治療技法の有効性を検証する。 閾値下うつ病のスクリーニング手続きに基づき,40名程度の対象者を一般大学生から抽出する。閾値下うつ病の基準を満たす対象者を,1.従来型の認知行動療法を実施する条件(CBT群),2.マインドフルネス介入を実施する条件(MBI群),3.通常のケアによる対照条件(対照群)にランダムに割りつける。CBT群とMBI群には,平成28年度にトレーニングを受けたセラピストがそれぞれの介入を実施する。対照群にはこれらの介入を行わない。ただし倫理的な観点から,いずれの条件においても大学内の心理相談室などの専門相談窓口をスクリーニング時に紹介する。研究期間中に対象者がこれらの専門機関で相談や治療を受けることは妨げない。よって,本研究の対照群は介入を行わない無介入条件ではなく,通常のケア(treatment as usual)条件である。研究プロトコル外で相談や治療を利用したかどうかはアセスメント時に確認し,その影響は統計的に統制する。介入前,介入後,介入終了後5ヶ月(フォローアップ)の3時点でアセスメントを行い,マルチレベルモデルを用いた分析によって効果を検討する。主要な効果指標は抑うつ症状の尺度(CES-D)であり,抑うつ症状の尺度得点の減少が評価の焦点となる。なお,対照群の対象者については介入群のセッションがすべて終了した後で,介入群と同様の介入を受けることのできる機会を設定する。そのため,フォローアップの時点ではアセスメントの対象とはしない。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の所属機関の変更に伴い,2016年度に実施予定であった比較試験の実施の一部を2017年度に実施するため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究実施のために雇い入れる研究補助アルバイトの人件費を2017年度に支出する。
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