研究課題
閾値下うつ病とは,うつ病の診断は満たさないが臨床的に重大な抑うつ症状を示す状態であるとされる。閾値下うつ病はうつ病には及ばないものの,深刻な精神健康上の問題を引き起こすことが知られている。本研究では,閾値下うつ病に対する従来型の認知行動療法と,新世代の認知行動療法であるマインドフルネス介入の有効性を直接的に比較した無作為化比較試験を実施する。平成29年度は,無作為化比較試験において使用する,従来型の認知行動療法のマニュアルと,マインドフルネス介入のマニュアルに基づくセラピストトレーニングを実施した。いずれの介入も5名程度の集団形式で実施することを想定したものであり,90分×5セッションから構成されている。これらのマニュアルに基づいて介入を実施するセラピスト1名のトレーニングが終了し,もう1名についても間もなく終了する見込みである。無作為化比較試験の正式な対象者リクルートに先立ち,予備的な研究において各マニュアルに基づく介入が十分に機能することを確認した。従来型の認知行動療法のマニュアルについては既にある程度効果が確立されているが,マインドフルネス介入のマニュアルについては平成29年度に行われた研究が最初の実践例となる。これらの予備的研究を受けて,無作為化比較試験の対象者リクルートが開始される。本研究のプロトコルは「関西学院大学人を対象とする医学系研究倫理委員会」において承認を得ている。
2: おおむね順調に進展している
セラピストトレーニングもほぼ終了し,予備的研究において各マニュアルに基づく介入が十分に機能することも確認できた。平成30年から本格的に無作為化比較試験を開始するための準備が整っている。
平成30年度には無作為化比較試験を行う。従来型の認知行動療法を受ける条件およびマインドフルネス介入を受ける条件を設定し,2つの治療技法の有効性を検証する。閾値下うつ病のスクリーニング手続きに基づき,30名程度の対象者を一般大学生から抽出する。閾値下うつ病の基準を満たす対象者を,①従来型の認知行動療法を実施する条件(CBT群),②マインドフルネス介入を実施する条件(MBI群),にランダムに割りつける。CBT群とMBI群には,平成28~29年度にトレーニングを受けたセラピストがそれぞれの介入を実施する。ただし倫理的な観点から,いずれの条件においても大学内の心理相談室などの専門相談窓口をスクリーニング時に紹介する。研究期間中に対象者がこれらの専門機関で相談や治療を受けることは妨げない。研究プロトコル外で相談や治療を利用したかどうかはアセスメント時に確認し,その影響は統計的に統制する。介入前,介入後,介入終了後5ヶ月(フォローアップ)の3時点でアセスメントを行い,マルチレベルモデルを用いた分析によって効果を検討する。主要な効果指標は抑うつ症状の尺度(CES-D)であり,抑うつ症状の尺度得点の減少が評価の焦点となる。
平成29年度に実施予定であった計画の一部(無作為化比較試験の実施)を平成30年度に実施するため次年度使用が生じた。研究実施のために雇い入れる研究補助アルバイトの人件費として使用する。
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Asian American Journal of Psychology
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