研究課題/領域番号 |
16K17370
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
篠原 岳司 北海道大学, 教育学研究院, 准教授 (20581721)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 教育ガバナンス / 教育統治過程 / 専門技術的過程 / 分散型リーダーシップ / チーム学校 |
研究実績の概要 |
本研究では、3年間において、教育ガバナンスの専門技術的過程に参画する多様な専門職の「学習」に注目し、いかなる「学習」がいかなる制度的・組織的条件によって成立し、教育ガバナンスを機能させうるかを理論的かつ実証的に解明していくことを目的としている。2年目では昨年度に続き理論研究を進め、分散型リーダーシップの理論に関する学説史上の位置づけについて追加的な検討を行った。従来の教育経営学においてリーダーシップ論が注目されはじめた1980年代以降、学校の組織文化への働きかけを主とするリーダーシップから、より人間の主体性に着目しその相互作用と相補性においてリーダーシップが再構築されている状況を整理し、分散型リーダーシップ論の到達点と課題を析出した。以上の成果から課題として本研究が引き取るべきものは、多様な背景を有する学習者の参画が所与の条件であるときの学校におけるリーダーシップ論の揺らぎの問題である。現代のスクールリーダーシップ論が、校長のリーダーシップから教師の相補的関係に注目点が変化している一方で、その議論が前提としてきた学校組織自体が、もはや教師の自律性と教育行政の管理との緊張関係の中だけでは捉えられない様相を見せている。チーム学校の議論からもわかるとおり、多忙状況におかれる教師の仕事の縮小や、他の専門職との協働による学校の業務範囲の再定義が追究されており、そこには従来の公の管理が及ばない民間のアクターも参入しつつある。その中でのスクールリーダーシップ論は、教育統治課程の変容と並行してパラダイムシフトが求められているに違いなく、最終年度に向けてこの現状を具体的事例から実証していくことが検討課題として見出されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度には不十分だった事例研究に着手するための理論的な枠組みの構築が進んだことで、おおむね順調な進度だと判断している。職場での仕事量はさらに増えてしまい、費やせるエフォートはますます限られてきているが、事例は既に選定済みであり、準備は着実に進展させられている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度以上に研究以外の業務が過剰となり、次年度は本研究に費やせるエフォートを確保することが変わらず優先課題となる。そのために、研究資料の整理や事例研究の分析には研究補助者の雇用も検討し、組織的に研究を遂行することで多忙化状況においても研究を遂行したい。事例研究では、複数の高校に依頼し質的な調査を行う予定である。それらの事例は学校経営およびその教育実践に教師以外の多様なアクターが参入する一方で、校長や教員のリーダーシップという従来の学校組織の体も保持されている状況を確認している。複数のアクターからインタビューデータを取る必要もあり、研究協力者や補助者の力を得て調査を遂行していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に事例研究で調査出張を予定しているため、旅費および研究補助者への謝金の支出が見込まれている。当該年度にわずかであるが発生した余剰額を、それらの旅費および謝金の足しにする予定である。
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