研究実績の概要 |
出版物は、著書1本(ひとつの章を執筆)と論文2本(単著2本)であった。著書は国際科学出版社からの出版であった。論文はいずれも査読付き研究論文であり、国際雑誌から出版された。いずれも量子ウォークの確率分布が、長時間極限においてどのように振舞うかを記述する数学的な解析結果であった。Quantum Information and Computation, Vol.16 No.5&6, pp.515-529 (2016)では、一次元格子上を運動する三状態量子ウォークの確率分布を解析して、長時間極限分布を導出した。その結果、その量子ウォークの確率分布には、ギャップ構造と局在化が同時に生じることがわかった。一方、Quantum Information Processing, Vol.15, No.8, pp. 3101-3119 (2016)では、一次元半直線上で定義される二状態量子ウォークの確率分布の具体的な表現形を導出することに成功した。さらに、フーリエ解析を用いることで、長時間極限分布も計算することができた。この研究では、量子ウォークに特殊な初期状態を与えることで、半直線上の量子ウォークが、全直線上の量子ウォークに焼きなおせることも証明されている。研究発表は、国内で4回行った(招待講演3回、一般講演1回)。いずれも、量子ウォークに関連した研究成果の発表であった。また、University of California, Berkeleyの数学科を訪問して、量子ウォークの研究も行っているProf. F. Grunbaum Albertoと、お互いの研究成果の報告を行うと同時に、量子ウォークの研究議論を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で目標とするギャップ構造を確率分布にもつような量子ウォークのモデルを発見することができた(Quantum Information and Computation, Vol.16 No.5&6, pp.515-529 (2016))。数学的に厳密な解析にも成功しており、長時間極限分布の導出にも成功した。さらに半直線上で定義される量子ウォークの研究にも挑戦し、その結果として確率分布の精緻な表現形を得ることができた(Quantum Information Processing, Vol.15, No.8, pp. 3101-3119 (2016))。国際科学雑誌から出版される本における量子ウォークの章の執筆、量子情報系の国際雑誌から論文2本の出版、そして、招待講演3件と一般講演1件により、研究成果の発表も順調に行われた。したがって、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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