研究課題/領域番号 |
16K17648
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
町田 拓也 日本大学, 生産工学部, 助教 (20637144)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 量子ウォーク / 長時間極限定理 / Parrondo Paradox |
研究実績の概要 |
本年度は、国際招待講演1件、国内招待講演2件を行った。カナダのモントリオールで開催された数学国際会議「Mathematical Congress Of The Americas 2017(以下、MCA2017)」では、半直線上の量子ウォークに関して得られた数学的な結果を発表した。日本大学理工学部の「量子光学・量子情報セミナー」では、量子ウォークの基本的な話からはじめて、これまでに得られている数学的な結果(おもに、長時間極限定理)をいくつか紹介した。北海道大学の数学教室の「数理科学セミナー」では、ある物理方程式に関係する量子ウォークの構成とそれから得られる極限分布についての発表を行った。現在、論文を1本国際雑誌に投稿中である。この論文は、アーカイブには投稿済みである(arXiv:1704.04554)。国際会議「MCA2017」においては、量子ウォークのセッションを海外の研究者と共同で運営した。第5回Yokohama Workshop on Quantum Walk(於 神奈川大学)を国内の研究者と共同運営した。海外渡航は、University of California BerkeleyのDepartment of Mathematicsに2回研究訪問を行い、ある量子ウォークモデルに関する研究をProfessor F. Alberto Grunbaumと進め、研究結果をまとめた論文を執筆して、2018年3月に国際雑誌に投稿した。論文の内容は、Parrondo Paradoxを生じるような量子ウォークモデルに対し、その確率分布の極限定理を導出した。極限定理は2つ計算され、ひとつは確率分布の長時間極限、他方は空間を時間でスケールした確率変数に対する分布収束定理であった。ともにウォーカーの空間分布に局在化が生じることを示す結果でもあった。また、これらの定理を応用することで、数学的な知見から、量子ウォークを量子ゲームと見たときに、そのゲームにParrondo Paradoxが生じることを理論的に明らかにできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
招待講演3件の依頼があり、これまでの研究成果を量子ウォークあるいは確率論の研究者に対して発表することができた。また、Prof. F. Alberto Grunbaum(Department of Mathematics, University of California Berkeley)と共同で行った研究について、得られた成果をまとめた論文を国際雑誌に投稿できた。同内容の論文を、arXivにも投稿して、研究の成果を世界に発信した。量子ウォークの分野を広げるための活動としては、国際会議における量子ウォークの特別セッションもオーガナイズした。世界の量子ウォークの研究状況を研究者同士で交換する機会を設けることに貢献できた。
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今後の研究の推進方策 |
量子ウォークの新しいモデルの構築を行い、コンピュータを用いた数値計算で量子ウォークの確率分布の性質を細かに調べる。最終年度は、量子物理学との関係も含めて、量子ウォークの研究を行う予定であり、物性との関わりも考慮しつつ研究を進める。とりわけ、トポロジカル絶縁体への応用も視野に入れて量子ウォークモデルの研究を行う。その後、モデルの理論解析をフーリエ解析と確率論的手法を用いて推進する。理論計算に伴い、研究者との研究議論が必要になった場合は、研究会での発表や研究打合せを適宜行う。とくに、これまでの共同研究者であるProf. F. Alberto Grunbaum(Department of Mathematics, University of California Berkeley)とは密に連絡を取り合って、意見を交換する。必要であれば、Prof. Grunbaumを訪問して、直接の議論を行う。得られた結果は国内外の会議にて発表して、成果の発信をする。今年度得られる研究成果は、最終的には論文にまとめて、国際雑誌に投稿する予定である。
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