研究実績の概要 |
補助事業期間全体を通じて、著書2本(単著1本、共著1本)と論文4本(単著3本、共著1本)の出版、そして、国際招待講演1件、国内招待講演7件、一般講演1件の研究発表を行った。最終年度の出版物は、著書1本(単著)と論文2本(単著1本、共著1本)であった。著書は国内出版社(裳華房)からの出版で、量子ウォークの極限分布をフーリエ解析を用いて導出する方法を細かく解説した学術書である。具体的な量子ウォークモデルに対し、それぞれの確率分布に対する極限分布の導出計算について記述した。論文は査読付き研究論文であり、国際雑誌から出版された。International Journal of Quantum Information, Vol.16, No.3, 1850023 (2018)では、一次元格子上を運動する二状態量子ウォークの確率分布に対し、その長時間後の振舞いを漸近的に記述する極限分布を計算した。その結果から、量子ウォークの確率分布にギャップ構造が生じることを数学的に明らかにした。また、Quantum Information Processing, Vol.17(9), 241 (2018)では、量子ゲーム理論に関係する1次元四状態量子ウォークの振舞いをフーリエ解析で計算し、2つの長時間極限定理を導出した。導出した極限定理により、量子ゲームにParrondo paradoxが生じることを理論的に証明でき、古典ゲーム同様、量子ゲームにもParrondo paradoxが存在することが分かった。研究発表は、量子ウォークに関する発表を国内で2回行った(招待講演2回)。また、University of California, Berkeleyの数学科を訪問して、F. Grunbaum Alberto教授と量子ウォークについて議論を行った。
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