研究実績の概要 |
本研究は,環境低負荷材料のみで構成され,かつ高効率太陽電池への可能性が期待できるCu2(Sn,Si)S3(CTSiS)の製膜と,薄膜太陽電池への応用を目的に遂行された。 平成28年度で明らかとなったCu-Si-Sn合金を硫化反応させる際の条件,Siの添加量,ならびに基板に関する知見・問題点を足がかりに,平成29年度はNaフリーガラスを基板に採用したうえで,Si添加量と硫化条件の調整を進めるところから実験を開始した。 実験を進めていく中で,(1) SiとCuSnS3との反応に膜内分布が生じており,反応が十分な箇所とそうでない箇所とで2種類の物性をもつ膜が成膜される場合がある,(2) 硫化処理した膜中のSi組成が減少している場合がある,(3) 膜中の金属元素の組成に分布が生じ,金属的な化合物の偏析による膜抵抗率が減少する(太陽電池の漏れ経路となるおそれがある),などの問題が確認された。出発材料の表面処理により(3) の問題が改善することが確かめられたが,(1)(2)については硫化処理中のSiの蒸散等も疑われる。ゆえに反応に用いる硫黄ガスを加圧状態にしたうえで800℃等の高温で反応させる等の処理が望ましいと考えられるが,下地のMo電極薄膜への影響が大となるため,太陽電池への実現には基板,裏面電極層も含めた総合的な検討が必要である。 なお成膜に関する成果の一部は国際会議(The 6th International Symposium on Organic and Inorganic Electronic Materials and Related Nanotechnologies)にて発表し,関連する貴重な意見を本研究に取り入れることができた。
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