本研究は、平成28年度からの2か年計画でドイツの都市計画分野におけるマネジメント論の歴史的発展経緯や現状での議論の構図の理解、具体的事例としてBIDとHIDの制度体系・整備状況の解明、ハンブルク市におけるBIDとHIDの実践成果と課題の分析を通して、ドイツの都市計画分野におけるマネジメント論の展開と実践面での成果・課題を明らかにすることを目的としている。平成29年度は、本研究が取り組む具体的な3つの調査課題である調査課題A「都市マネジメント論の展開」、調査課題B「BID/HIDの制度体系・制度整備」、調査 課題C「ハンブルク市のBID/HIDの実態」のうち、特に調査課題Cに取り組み、前年度のBIDの網羅的整理を踏まえてHIDの制度調査・事例調査を行った。この際に、ドイツで唯一実現化されているハンブルク市のHIDの実施地区での現地調査やヒアリング調査を含めて、以下の結果を得た。1.HIDは不動産所有者や地権者による自助的行為を促すものであり、一般的な行政サービスの上乗せを自ら行える点で地区の実情に迅速に対応できうる仕組みである。2.一定区域内の負担金の強制的徴収を行える点で既存の地区再生制度とは異なるが、地区の共有財産とみなされうる公共空間整備が主であり個々の建 物が抱える課題は解決することができない。3.時限的な仕組みであるがゆえに、HIDを更新しない場合は、持続的に地区マネジメントを行うことが困難であるとも考えられ、担い手の育成は一つの課題といえる。なお、H29年度には、研究成果を査読付き紀要論文と書籍(1章分)として公表し、前年度の研究成果も査読付き学術論文及び学会発表を行っている。
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