前立腺癌のNK細胞攻撃回避機構におけるICAM1の関与を検討した。WT、GFP、GN-DU145及び-PC3をNK様細胞(MTA)と共培養し、同時に抗ICAM1抗体、または非特異的抗体を培地に投与した。その結果、DU145、PC3のどちらの細胞株においても、WT、GFP 群において抗ICAM1抗体投与によって生存率が増加した。しかし、GN群においては生存率の変化はなかった。次に、ICAM1過剰発現GN-DU145(ICAM1/GN-DU145)を作製し、MTと共培養すると、GN-DU145と比較して生存率は著しく減少した。さらに、NK細胞中和SCIDマウス、及びその対照群の背部皮内にGN-DU145及びICAM1/GN-DU145を移植すると、NK細胞中和群ではどちらの細胞も腫瘍を形成するが、対照群ではICAM1/GN-DU145は腫瘍を形成できなかった。これらの結果から、GN-DU145のNK細胞攻撃回避にはICAM1発現低下が重要であることが示された。 次に、スフィア形成DU145が同様の機構によってNK細胞攻撃を回避するのかを検討した。スフィア形成DU145のICAM1低発現細胞分画は高発現細胞分画と比較してNANOG発現量は増加していた。更に、ICAM1過剰発現DU145(ICAM1-DU145)を作製し、WT-及びICAM1-DU145のスフィア形成細胞(SP-WT-、SP-ICAM1-DU145)を作製した。各スフィア形成DU145 NK細胞中和SCIDマウス、及びその対照群の背部皮内に移植すると、NK細胞中和群においてはどちらの細胞も腫瘍を形成した。しかし、対照群においてはSP-ICAM1-DU145は腫瘍形成能を示さなかった。以上より、スフィア形成DU145はNANOG高発現によってICAM1発現低下を誘導し、NK細胞からの攻撃を回避していると考えられる。
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