光照射のみで芳香族炭化水素を分解できる光合成細菌の多様性を解明し、新規集積培養株を得ることができれば、将来的な光合成細菌のバイオレメディエーションへの利用の幅が広がる。トルエン、エチルベンゼン、シクロヘキサン等の芳香族炭化水素はガソリン中に多く含まれる成分であり、生物毒性があることから油汚染の指標としてよく用いられる。本研究の目的は、芳香族炭化水素を分解する酸素非発生型の光合成細菌に着目し、その多様性を明らかにすることと、環境中における芳香族炭化水素の分解への貢献度を解明することである。 本年度は、昨年度までに得られた海洋堆積物を接種源とした光合成細菌を含む嫌気集積培養系に着目して更なる解析を行った。この集積培養系にはトルエンを基質として添加している。培養を継代して16S rRNA遺伝子に基づいたクローンライブラリーを作成したところ、検出された微生物は属レベルで約10種類に限られており、酸素非発生型の光合成細菌も含まれていた。今回検出された光合成細菌の近縁種の、芳香族炭化水素分解への関与については知られていない。 次に、このトルエンを基質とした集積培養系に含まれる微生物の分離を試みた。その結果、海洋性の酸素非発生型光合成細菌を分離することができた。今後その他の構成種も分離を進め、それぞれに芳香族炭化水素の利用能力があるのかどうかを培養実験で明らかにする。また光合成細菌と他種微生物との相互作用についても解析したい。
|