研究課題
ゲノムインプリンティングとは、ある対立遺伝子が父親から由来したか母親から由来したかに応じて遺伝子発現の有無が決定される現象の事である。植物では、その生物学的意義やインプリンティングを受ける遺伝子が生じる原因などは、あまり解明されていない。本研究では、アブラナ科植物であるBrassica rapaを用いて網羅的なインプリント遺伝子の同定と、胚乳におけるゲノム全体のエピジェネティックな修飾状態を明らかとすることを目的とした。本年度はBrassica rapaの2系統を相互交配して、未成熟な種子から胚乳を摘出し、RNA-seq法による全ゲノム転写解析を行ったところ、1000個以上の遺伝子がインプリンティングを受けることが明らかとなった。また、これらの系統と別の2系統を用いて、同様の解析を行った結果、この系統間においても1000個以上のインプリント遺伝子を同定することができた。このことより、これまでインプリント遺伝子が報告されているシロイヌナズナやイネなどに比べて、Brassica rapaではインプリンティングを受ける遺伝子が多く存在することを明らかにした。また、シロイヌナズナのインプリント遺伝子との比較を行った結果、保存されているインプリント遺伝子は30個以下であり、その保存性は高くないことが明らかとなった。さらに、自家交配後10日、13日、17日の種子、葉、茎、花序においてRNA-seq法による全ゲノム転写解析を行った。現在、同定したインプリント遺伝子の組織・時期特異的な遺伝子発現について解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
今年度は、Brassica rapaにおけるインプリント遺伝子を同定することができた。これ以外にも、異なる系統を用いたインプリント遺伝子の多様性の検証やエピゲノム解析も順調に進展していることから、今年度はおおむね順調に研究が進展したと考える。
今年度、同定したインプリント遺伝子について、遺伝子重複とゲノムインプリンティングの関連性について解析を進める。また、エピゲノム解析を行い、胚乳におけるエピジェネティックな修飾状態を明らかにし、転写への影響について調べる予定である。
次世代シークエンサーによる解析は外部委託する予定であったが、所属している京都産業大学で次世代シークエンサーが設置されたため、外部委託を行わなかった。また、英文校閲費として予定していたが使わなかった。
消耗品費:解析用の試薬等、消耗品の購入英文校閲費:英文校閲費として使用
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Euphytica
巻: 213 ページ: 28
10.1007/s10681-016-1821-0
Proc Natl Acad Sci U S A.
巻: 113 ページ: E6704-E6711
10.1073/pnas.1613372113
BMC Plant Biol.
巻: 16 ページ: 45
10.1186/s12870-016-0734-3
Genes Genet. Syst.
巻: 91 ページ: 1-10
http://doi.org/10.1266/ggs.15-00058
Breed Sci.
巻: 66 ページ: 333-349
http://doi.org/10.1270/jsbbs.15114
巻: 91 ページ: 85-95
http://doi.org/10.1266/ggs.15-00055