研究課題
前年度に引き続き、ArfA+RF2によるリボソームレスキュー機構の分子メカニズムを明らかにするために、ArfA/RF2/リボソーム複合体の解析を行った。本研究は大きく分けて構造解析とカイネティクス解析からなるが、平成29年度はカイネティクス解析を中心に行った。平成28年度のクライオ電子顕微鏡解析の結果から、ArfAとRF2は近接した部位に結合していることが明らかになった。しかし、構造解析の結果のみでは、直接の相互作用の有無は不明であった。構造解析の結果から予想される結合部位に着目し、RF2変異体を作製し、in vitroで活性を検証した。ArfAはRF2と共に翻訳の停滞を解消するが、もう1つのペプチド解離因子RF1とは機能しないことが知られている。RF1とRF2は立体構造だけでなく、終止コドンを認識して翻訳を終結させるという点において機能的にも似ている。しかし、なぜArfAはRF1ではなく、RF2と共に機能するのか、複合体の構造解析の結果から説明することができずにいた。そこでArfAと共に機能する上で重要な部位を明らかにするために、RF1の変異体を作製してin vitroで活性を検証した。ArfAおよびRF2の結合部位はリボソームのデコーディング領域近傍であったことから、周辺に結合するアミノグリコシド系抗生物質であるパロモマイシンを用いて、ArfA/RF2による翻訳停滞解消活性に対する影響を検証した。
2: おおむね順調に進展している
多数のRF2変異体およびRF1変異体を作製し、in vitroで活性の検証を行った。最初の段階として、定性的な活性評価、すなわちArfA依存のfMet-tRNAの加水分解活性の測定を行ったところ、興味深い変異体を複数得た。それらの変異体に対して、さらに定量的なアッセイを行うと同時に終止コドン依存の翻訳終結活性およびリボソーム結合活性評価も行った。
引き続き、変異体を用いたカイネティクス解析を行っていく予定である。加水分解活性についてはクエンチフロー法による速度定数の決定を、リボソーム結合活性については平衡定数・結合速度定数・解離速度定数の決定を目指し、定量的な活性評価系の確立に向けて研究を進めていく。
論文投稿費用として計上していたが、年度内に間に合わなかったため。
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Nucleic Acids Research
巻: 40 ページ: 6945-6959
10.1093/nar/gkx324