近年、翻訳停滞解消因子は新しい抗生物質の標的として注目されつつある。一般に、翻訳を阻害する抗生物質はリボソームや翻訳関連因子に作用する。翻訳のメカニズムは生物種を問わず共通しているため、このような抗生物質は広範囲のバクテリアに対して効果を示す。しかし、このような広い抗菌スペクトルを示す薬剤は耐性菌の蔓延リスクを高めるという問題を内包している。翻訳停滞解消因子は結核菌・ピロリ菌・赤痢菌・ペスト菌等の一部の病原菌の生育にとって必須であり、その阻害薬は耐性菌出現リスクの低い次世代の抗生物質として期待される。本研究は、このような薬剤開発の基盤となるものである。
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