研究課題/領域番号 |
16K19005
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
長谷川 恵美 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 助教 (40765955)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 中枢概日時計 / 視交叉上核(SCN) / 電気生理学的特性 / パッチクランプ法 |
研究実績の概要 |
本研究では、中枢概日時計のニューロンタイプ特異的な神経生理学的解析を行ってきた。今年度は、脳スライスで中枢概日時計・視交叉上核(SCN)ニューロンタイプ別に電気生理学的特性の解析を進めた。さらに、概日行動リズムに異常が観察された遺伝子操作マウスについても、同様の実験方法を用いて取り組んでいる。 SCNは、ほぼ全てのニューロンにおいてGABA 作動性であり、その一部が特定の神経ペプチドを共発現する。主要なニューロンタイプは、背内側部に分布するAVP(arginine vasopressin)産生ニューロンと腹側部に分布するVIP (vasoactive intestinal peptide)産生ニューロンである。実験方法として、赤色蛍光タンパク質でラベルされたSCN・AVPニューロンやVIPニューロンの神経活動や電気生理学的特性、日内変動について計測を行った。まず始めに、ホールセル法を用いてAVPニューロンの記録を行ったところ、記録した細胞ごとに全く異なる神経活動を示した。得られたデータが全くの予想外であったため、様々なパッチクランプ法(セルアタッチ法やホールセル法、グラミシジン穿孔パッチ法)を用いての記録に取り組んだ。その結果、非常に興味深いデータが得られた。さらに、関与するイオンメカニズムを同定するため、様々なチャネルブロッカーなどの投与実験も行っている。現在は、特にGABAA受容体の役割について注目して実験を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SCNニューロンネットワークの作動メカニズムを明らかにするために、主要なニューロンタイプ別に電気生理学的解析を行った。特に、AVPニューロンやVIPニューロンを同定しての神経活動の記録は、従来の理解をさらに発展させうる提案ができると考える。さらに、概日行動リズムに異常をもつニューロンタイプ特異的変異マウスでも同様の解析を行ったことで、細胞・神経回路レベルの異常と行動レベルの異常を結びつけることができる可能性を見い出しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
現在は、AVPニューロンやVIPニューロンにおけるGABAA受容体の役割について詳細に調べるための実験を行なっている。それと同時に、概日行動リズム異常をもつニューロンタイプ特異的変異マウスのSCNスライスにおける電気生理学的特性の解析も行っている。予備的ではあるが、ニューロンタイプ特異的変異マウスでは、これまでと異なる現象を示すデータを得つつある。 今後、SCNニューロンネットワークにGABAA受容体の関与が大きく関わっているのではないかと予測できるため、細胞内Cl-濃度を正常に保った状態で記録できるグラミシジン穿孔パッチ法を用いて、より詳細に研究を進めていく。この方法を用いることで、AVPニューロンやVIPニューロンにおけるGABAに対する応答性(興奮性or抑制性)やGABA平衡電位の測定を正確に行うことができる。ニューロンタイプ特異的変異マウスでも同様の実験を行う。さらに、日内変動により、GABAA受容体の関与がどのように変化するのかも検討してみたい。 また、in vivoにおけるニューロンタイプ別の神経活動を記録するための実験系のセットアップが遅れているため、積極的に進めていきたいと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究室の引っ越しに伴い、自身も昨年9月に異動があったため、予定通りに研究を進めることが困難となり実験計画を見直す必要があった。
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次年度使用額の使用計画 |
電気生理学的実験を行うために必要な消耗品や試薬などの購入を予定している。
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