本研究では、中枢概日時計・視交叉上核(SCN)の脳スライスにおけるAVP(arginine vasopressin)産生ニューロン、VIP(vasoactive intestinal peptide)産生ニューロンの神経活動や電気生理学的特性およびその日内変動を正常マウスとニューロンタイプ特異的変異マウスにおいて明らかにすることを目的として研究を行ってきた。SCNにおけるほぼ全てのニューロンは、GABA作動性であり、その一部が特定の神経ペプチドを共発現している。前年度までに、正常マウスを用いることでSCN内の神経活動の日内変動にGABA受容体が大きく関与しているということを確認できた。また、GABA受容体の応答性に対するAVP産生ニューロン、VIP産生ニューロンの神経活動の変化は、それぞれ異なっており大変興味深い結果を得られた。そこで、本年度はニューロンタイプ特異的変異マウスにおけるGABA受容体の関与について検討を行った。概日行動リズムの周期において良好な結果を得られているAvp-Bmal1-/-マウスやAvp-Vgat-/-マウスの脳スライスにおけるAVP産生ニューロンの電気生理学的特性やGABA受容体の関与がどのように変化したのかを調べた。VIP産生ニューロンに関しても同様の解析を行い、AVP産生ニューロンとVIP産生ニューロンでどのような違いがあるか比較した。その結果、それぞれのニューロンにおいてGABA受容体の応答性の変化、さらに神経活動と日内変動との関係性について大変興味深い結果を得ることができた。
|