研究課題
本研究では腎臓の遠位尿細管におけるマグネシウム再吸収と血圧調節の関わりを明らかにすることを目指している。腎臓の遠位尿細管で強く発現していることが知られるマグネシウム取り込みチャネルTRPM6を腎臓特異的にノックアウトしたマウスでは、野生型マウスで見られる飼育環境の明暗サイクルに応じた血圧変化(夜間での上昇)がほとんど起きないことがわかったので、そのメカニズムの解析を行った。高マグネシウム含有餌をマウスに与えることで腎臓の遠位尿細管でのTRPM6の発現が減少することがわかっている。そこで野生型マウスに高マグネシウム含有餌を与え血圧をテレメトリーシステムで継時的に測定した結果、活動期である夜間の血圧上昇が起こらなくなった。また、腎臓特異的TRPM6ノックアウトマウスで血中レニン量の測定を行うと、野生型で見られるような夜間での血中のレニン量の上昇がなかったことからTRPM6による血圧調節にレニンが関わっていることが考えられた。野生型マウスにレニン阻害剤を投与するとTRPM6腎臓特異的ノックアウトマウスと同様に夜間の血圧上昇が起こらなかった。さらに腎臓でのレニン分泌を刺激する交感神経を除神経処置でも夜間の血圧上昇が起こらなかった。これらの結果からTRPM6の発現量の低下がレニン分泌に影響を与えることで夜間での血圧上昇を抑制している可能性が示唆された。本年度の研究成果から、腎臓遠位尿細管でのTRPM6によるマグネシウム輸送が交感神経を介した腎臓からのレニン放出を抑制することで血圧制御において重要な役割を果たしていることが示唆された。
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Antioxidant & Redox Signaling
巻: in press ページ: in press
10.1152/ajplung.00071.2012.
http://www.biken.osaka-u.ac.jp/lab/cellreg/index.html