研究実績の概要 |
本研究期間中に以下の3つのことを明らかにした。 1)Notch1だけでなくNotch2も白血病細胞の増殖に関与している可能性を見出した。 2)Notchシグナル阻害剤への耐性メカニズムの一端の解明した。 3)偽遺伝子PTENP1が白血病細胞において機能的役割を担っている可能性を見出した。 2019年度はNotchシグナル阻害剤に耐性を示す細胞の特徴であるPTENに着目して、PTENの機能解析を行った。その過程において、PTENの偽遺伝子であるPTENP1が白血病細胞の分化、増殖に関与している可能性を見出した。偽遺伝子は機能遺伝子の塩基配列と類似しているが、機能を有していないと考えられているDNA領域のことであり, 重要ではないとみなされてきた。 しかし、近年、偽遺伝子から発現するRNAが機能を有していることを示す例が報告されている。 本研究では, 偽遺伝子PTENP1が白血病細胞の細胞周期制御にも関与している可能性と幹細胞の分化と増殖に関与しているNotch、mTOR、Hedgehog、WNTシグナル伝達系への影響について解析した。その結果、偽遺伝子PTENP1は機能的な役割を担っている可能性が明らかになった。PTENP1ノックダウンによってS期の細胞比率が増加したことと細胞周期に関与しているCyclin D1およびCDK2タンパクが増加したことから、PTENP1は一部の白血病細胞の細胞周期を制御している可能性が示唆された。さらに、PTENP1遺伝子発現をノックダウンすると、Notch、mTOR、Hedgehog、Wntシグナル関連蛋白に変化がみられたことから、PTENP1が幹細胞の分化、増殖に関与しているシグナル伝達系と関係があることが示唆された。これらの知見は将来のゲノム医療およびゲノム関連検査の発展に寄与し得る。
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