研究課題/領域番号 |
16K19327
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
中嶋 駿介 旭川医科大学, 大学病院, 助教 (80596289)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | PTPRD / NAFLD / 遺伝子多型 |
研究実績の概要 |
我々は、High throughput sequence法により非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)および非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の病態進展に関与する遺伝子多型(SNP)として新規にPTPRD rs35929428を同定した。 PTPRD rs35929428 (R995C)はPROVERN preditionを用いて検討したところ蛋白質機能に影響を及ぼすことがわかった。次にPTPRD rs35929428の変異発現頻度を検討し、健常ボランティア群との比較にて非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)群では野生型に比して変異型が多く、肝組織標本における検討では野生型に対して変異型では線維化進展例が多く、脂肪沈着が多いことがわかり、NAFLDの基本的病態に関与している可能性が示唆された。 PTPRD rs35929428がコードする蛋白PTPRD R995Cを発現するベクターをヒト肝癌細胞株Huh7に導入し、PTPRD R995Cの機能解析を行った。その結果、野生型PTPRDはIL-6刺激に対してSTAT3のリン酸化の明らかな亢進を認めたが、PTPRD R995Cは野生型に比べて、STAT3のリン酸化の亢進の減弱が認められ、PTPRD R995CはSTAT3脱リン酸化のgain of functionである事が考えられた。 次に肝組織標本においてpSTAT3の免疫化学染色を行ったところ、PTPRD野生型と比較して変異型ではpSTAT陽性率は低下して おり、STAT3のリン酸化が減弱していることが示唆された。 以上のことからPTPRD R995CはSTAT3の脱リン酸化を亢進させることにより,STAT3を抑制することで肝脂肪化および線維化が誘導されている可能性が示唆された。 本研究内容の要旨をまとめ、国際学会[The International Liver Congress 2017(Amsterdam)]にて発表した (Young Investigator Bursary)。また、研究成果についてはJournal of Gastroenterology and Hepatologyにて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果について、国際学会での発表および英文誌への論文採択を修了し、得られた研究成果についての発表は完了した。しかし、当初の計画書に記載されたSTAT3転写標的遺伝子産物の発現量に関しての詳細な検討は完了しておらずこれについては引き続き研究が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
PTPRD R995Cの生体内における機能解析を行い、肝組織における脂肪沈着、炎症の程度、および肝線維化進展への関与に関して詳細な検討と解析を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画よりも物品費が軽減されたことによる。次年度は今後の計画のための費用がさらに必要となるため次年度使用額と合わせて物品購入としての実費として算出予定である。
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