研究実績の概要 |
必須アミノ酸であるトリプトファンをキヌレニンに代謝する律速酵素であるIndoleamine-2,3-dioxygenase (IDO)はIFN-γやTNF-αにより誘導され、代謝産物であるキヌレニンはNK活性低下、Treg誘導といった免疫抑制作用を持つことが知られており、IDO/TDO阻害薬は、海外で悪性黒色腫、非小細胞肺がんに対する治験が進行中であるが、肝線維化におけるIDOの意義は明らかではない。今年度は肝線維化におけるIDOの関与を明らかにすることを目的とした。非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease; NAFLD)は近年増加傾向にある疾患である。NAFLDはウイルス性肝疾患と同様に、進行性に肝臓の線維化をきたし(肝線維化)、発癌リスクを上昇させることが報告されている。発がんリスクは、肝線維化の程度(ステージ)の進行とともに増加することが知られている。肝生検によって肝線維化のステージ診断が行われたNAFLD患者と健常者を対象とし、血清IDO活性と40項目のサイトカイン/ケモカインの血中濃度(血清濃度)、IL-34、M-CSF、sCD163、YKL-40を検討した。血清IDO活性はNAFLD患者において健常者と比較して有意に高く、肝臓の線維化の進行とともに上昇していた。血清IDO活性はマクロファージの活性化を反映したマーカーである、IL-34、M-CSF、sCD163、YKL-40は正相関を示すことを見出した。今後、免疫細胞と星細胞、プライマリー肝線維芽細胞の共培養の系を用いて線維化機序進展とIDOの関連を検討予定である。
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