研究課題
カルシニューリン阻害薬(CNI)は難治性川崎病の治療にoff-labelで使用されてきた。しかしながら、CNIが川崎病患者における冠動脈病変の発症に対して予防的な効果があるかどうかは明らかでない。冠動脈に対するCNIの効果や川崎病マウスモデルの冠動脈炎に対する作用機序を調べるため、野生型、重症複合免疫不全(SCID)、caspase-associated recruitment domain 9 (CARD9)欠損、myeloid differentiation primary response gene 88 (MyD88)欠損の各マウスを用いて、nucleotide-binding oligomerization domain-containing protein 1 (NOD1)リガンドであるFK565を投与する実験を行った。また、血管構成細胞・単球系細胞や血管組織を用いたin vitro実験も行った。組織病理学的解析では、シクロスポリンAやタクロリムスの投与量依存的にNOD1誘導性冠動脈炎が増悪した。シクロスポリンAは高用量でのみマウス冠動脈炎を増悪させたが、一方でタクロリムスはヒトの治療域内の投与量で増悪させた。SCIDマウスやCARD9欠損マウスでは冠動脈炎増悪効果を認めたが、MyD88欠損マウスでは認めなかった。CNIにより、血管内皮細胞の接着因子発現や単球系細胞からのサイトカイン産生が亢進した。これらのデータにより、血管構成細胞と単球系細胞の両者が冠動脈炎の増悪に関与していることが示唆された。血管構成細胞とマクロファージの両者におけるMyD88依存性の炎症性シグナルの活性化が、冠動脈炎増悪に寄与していると考えられる。CNIを難治性川崎病の治療に用いる際には、冠動脈病変の発症に特に注意を払うべきである。
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Clinical & Experimental Immunology
巻: 190 ページ: 54~67
10.1111/cei.13002